いつの間にか、落語の世界に興味をもつようになってから
久しい気がする。
神楽坂に住んでいたときに、近所のお寺さんで定期的に寄席を
やっているとか、それこそ、同じ町内に有名な落語家の自宅があるとか
で、なんとなく落語について親近感を持ち始めたのがきっかけか。
とくに名古屋に移ってから、関西へ足を伸ばす(というほどの距離でもないが)
機会も増えて、南森町の繁盛亭にはなんどか訪問。
とくにコロナ禍で合間を見ての公演の時期にたまたま行ったせいか、観客が
少ないなかで奮闘する芸人さんたちの姿を見て、芸事はやっぱりお客さんが
いてなんぼやな・・と共感し、気になる落語家についてはその後も活動を
見守っていた。
その一人が、たまたまわがふるさと岐阜で落語をするというので足を運ぶ。
なんとカフェに高座をつくっての落語会。なんとも今風である。
場所柄もあって、若い女性が多数来場されていたのが印象的で、落語は
決して年寄りの、大人の趣味の世界ではないことを知る。
落語の世界は、コミュニケーションの仕事をする者にとっては大いなる学びの
場になる。落語家の話術そのものはもちろんであるが、お客さんの様子を見ながら
落語本番に向かう「枕」の入り方、持って生き方・・・これはとても参考になる。
今日の演目に興味を持ってもらうため、身近な話題から入る例も多い。
今回の公演も、楽しい枕からはじまった。
「つかみ」をとることが、重要。そこでお客さんの気持ちをひとつにして、
落語本体に流れていく。流れをつくるのが、冒頭の語り、枕である。
今回、聞かせていただいたのは笑福亭喬介さんという中堅・若手の落語家。
なんとも本場大阪の生まれらしい、ネイティブな落語家という印象。
話の流暢さだけでなく、思わず笑いを誘う、なんとも言えない三枚目感覚が
人気の秘訣かもしれない。
枕のわかりやすさも特徴かもしれない。
話をきいていると、最近見たこと、聞いたことをうまく取り入れて話している。
本当にあったことか想像の世界かは、本人のみぞ知るのであろうが、
おそらくリアルな話題であろう。常に話題を探しているという姿勢が会話から
伝わってきた。
話を聞きながら、自分の仕事と同じだと改めて思った。
常にリサーチしている。何を見ても聴いても、あ、これはあそこで使える。
ここで使える。と思いながら体験している。
それが仕入れでもある。
アウトプットする仕事をする人は、インプットの時間も大切にしている。
そんなことを感じながら、生身のパフォーマンスを楽しく学ばせていただいた。
落語家さんもコミュニケーションクリエイターである。
さあ、今日もネタになる話題を求めて 身も心も旅に出るとしよう。