売れる本、好きになる本。著者の志も評価軸

最近、急にブレイクしているように見受けられる、フランス人経済学者のピケティ教授。
「21世紀の資本」という著作で、経済格差を生み出すのは労働による賃金でなく資本であり、この資本をもつ富裕層への税制改革こそ、格差是正にはまず必要だ。ということを書いているらしい。これまで格差といえば、目先の給料、労働による所得が問題になっていたが、確かに長き歴史を振り返ってみれば、本当のお金持ちとは、働かなくても食べていけるような地主だったりしているわけで、素人の私にもなるほど、と思う部分が多々ある。まだ解説やインタビューにしか触れておらず、本書は読んでいないが、長い年月をかけて世界各国の税制を調べてこられたというその緻密さと地道な姿勢に頭が下がる。そして、この教授は、今回のこの出版を通じ、経済学というのは、一部の専門家が議論するものだとされてきた・・というこれまでの常識を変え、より多くの人が経済学に興味をもち、意見をもてる、その議論の材料になればいいと思っている・・・という発言をされた・・実はこの点に共感を抱いた。
本とは、確かに人々の刺激になったり、議論の素材になったりするものが良い。人々に問題提起をし、読者が考えるという行為を促進させてくれる本こそ、ホンモノだ。ただ700ページの本を持ち歩く気にもならず、重い本はインテリアになりがちなので、こういうものこそ、電子書籍に向くのかな?この教授の自然な語り口が著作への興味にもなる。動機がいい、志が高い、そしてどこかに庶民的な空気を漂わせている点も興味あるところだ。いずれにせよ、よくある一過性のブームにならないように願っている。本書はうーん。一般向けというならばもっと薄くて分冊にしてもらっても・・・いいのですが・・。

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