カラー・インパクトの恐怖

色彩というのはコミュニケーションにおいて、言葉や文字以上に、即伝わる伝達素材である。ビジネスにおいても、イメージカラー、テーマカラーをコンセプトにもとづき、設定することで統一イメージなり、固有のメッセージを伝えようとする。私自身も自営業開始以来、一貫して16年、同じ色をテーマカラーとして活用し、何も言わなくても気づく方からは「紫がトレードカラーですか?」「パープルがお好きなんですか?」とのお言葉をいただき、それがきっかけで会話がスムーズになることも多く、イメージももってもらいやすく、色は音楽同様、人の感性に無意識に伝えることができる有効な手段として意識している。
このようにコミュニケーションにとって、色は大変重要なのであるが、ときには反抗のアピールにも使われることがあり、最近このことについて考えさせられる。マスメディアからいやおうなく伝えられる残虐な写真。ここではオレンジ色が圧倒的に目立っている。目をそらしたいけれど、そらすことができない色、それがオレンジ色だ。もともと私が好きな色のひとつであり、時々サブカラーとして使いたい。それは太陽の色であり、まさしくフルーツオレンジをイメージさせ、元気なイメージがある。イタリアのオレンジのマフラーを以前もらったことがあるが、なんと目の覚めるようないい色だと気に入り、おもいっきりおしゃれになった気になった。しかし、この糸はその分大変目立つ色であり、アメリカなどにおいては、もっとも罪の重い囚人に着用される服の色がオレンジ色だそう。脱走させないように、万一のときもすぐ見つかるようにという意図らしいが、本当に目立ち、目に焼き付き、また目を閉じても鮮やかに脳裏によみがえる色がこのオレンジだ。店のサインや信号にも使われる赤色と、注意を喚起する黄色の両方の要素をもっているから、目立って目立って・・・。そしてパワーを人に与えてしまう。今回の利用はまさしく、負のパワーの象徴だ。
文字よりも、その写真を見るのがいやで、新聞を折り返してしまい、すぐ捨てたくなる。テレビもネットもその写真から目をそむけたくなる。悲しい写真と情熱の色が恐怖を倍増させている気がしてならない。人を釘づけにし、恐怖にさらす・・。色も言葉も文字も人が幸せになるように工夫されたい。もうこの写真が世の中に出回るのを見たくないし、このことに人々も慣れてはいけない。
色のプロパガンダ。恐るべしだ。皮肉なことにこんな現実からも広報戦略について考えさせられてしまう。

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