空青く、海蒼く、心に沁みるわが聖地。

このたび、世界遺産に登録された、潜伏キリシタンの里のひとつ、長崎市の外海地区。
市内から離れているから、(だからこそ、潜伏の地になったのであるが)これまでは文学や宗教、
歴史に興味がある人ぐらいしか訪れなかった。
これからは様子が変わるかもしれないが。
それはそれとして、私はこの場所が大好きで、大好きで 永遠のあこがれを持ち続けている。

かの遠藤周作もたいそう気に入っておられたようで、ここを舞台にあの「沈黙」が生まれた。
実際に足を運んでみると、小説を通じて知った禁教時代の苦難の様子が偲ばれ、
苦難を乗り越えたからこその、静かな深さと穏やかさを感じることができる。

最近、やっとみつけた遠藤周作の沈黙の碑。おお、ここにあったのか。
先に書いた、出津教会などド・ロ神父のゆかりの地の高台に、それはある。
「人間はあまりに哀しいのに、
主よ、海があまりに碧いのです」

沈黙に出てくるこの言葉が、石碑に刻まれている。

主よ。の呼びかけは、遠藤氏の神への問いかけであろうが、
読むほどに
「人間があまりに哀しいのに、
空があまりに碧いのです」
このくだりが深く刻み込まれる。

そして、ここに立つと余計に
この言葉が全身全霊に染みてくるのだ。

喧騒の世から離れ、ここにくると、
人間と自然の本性が見えてくるような気がするのだ。

そして。ここに来ると、
ずっと立ち尽くしていたくなる。
そんな気持ちにもなる。

この記念碑の近くに、遠藤周作の記念ミュージアムがある。
氏がもっとも好きだった最高の場所に立っている。

空は青く、海は蒼く、
この美しき世界に、私たち人間は包まれて存在する、生々しい存在。

世の人よ、もっと穏やかにあれ。
海も空もそう言っている。
そんな気持ちになってくる。

映画以上に、現実の「ここ」は感動的だ。

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