世界遺産の貢献人に会う

3年前、長崎の平戸でザビエルのコンサートを実現することができたのは
キリスト教会群の世界遺産登録という目標があったから。地元行政が市民の啓蒙・普及のために
との願いで、潜伏キリシタンの信仰を今なお守りぬいている生月町で、この企画が実現した。
にもかかわらず、すぐには世界遺産に登録されず、内容の修正を求められた。
そして、このたびついに、めでたく長崎と天草の潜伏キリシタンの関連地域・集落が
世界遺産に登録された。
平戸も、そして長崎市の出津も、いずれも私にとっても忘れることができない
地、そのいずれもが今回、その登録が認められた。
さぞかし、地元は盛り上がっているかと思ったが、マスコミの取材はかなり増えている
ようであるが、来訪者数はまだそんなに変化がないようだ。
これからの夏~秋のシーズンに向けて、増えているかもしれないが・・。
行政関係者は、町おこしにと勢いづいているが、教会関係者はまた違う目線で今回の登録を
見守っている様子。

そんななか、信徒さんであり、また先祖が、禁教の時代この地で生きた女性、そして
世界遺産登録と言われる時代よりずっと前から、長崎市の外海で地域おこしを
がんばってこられた女性に出会う。
彼女は、日宇スギノさん。自分で当地で小麦を育て、明治時代に
地元で布教・教育に尽力されたド・ロ神父さんの伝えた製法でパスタをつくり、
地元の産業育成にも貢献され、また歴史的建造物の維持保存にも貢献され、地
元の観光活性化にも寄与された方だ。

昨年、このド・ロ神父ゆかりの場所でのコンサート時にお世話になり、それからのご縁だ。
今も静かな、遠藤周作があまりに海が碧いと言葉を残したこの土地に暮らし、
内外にこの地の魅力を地道に発信されている方だ。

「近々、NHKがパスタをつくるところを取材に来るそうですよ。」
と、世界遺産登録後、ますますご多忙のようだ。
なんだか、こんな風にまっすぐに年を重ねておられる人に出会って、
心が清らかになった。

いつか、彼女と、彼女のレストランの名前のゆかりの地、そして
ド・ロ神父の里であるヴォスロールを旅しているかもしれない。

改めて、このたびの世界遺産登録を祝し、また永遠にこの歴史が
後世に受け継がれることを
心より祈っている。
どんな時代になっても、清らかにまっすぐに生きることが大切だ、
そんなことを、素敵な笑顔の彼女から学んだ。

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