いわゆる現役のビジネスマンをリタイアされ、
約1年程経つ方と久しぶりに会う。
その方とはもう15年ほどのおつきあいになるかもしれない。
お会いしたときから現役時代は、上場企業の取締役をつとめておられた。
真面目で努力家。そして特に印象が強かったのは
人の名前を覚えるのが早いということ。
いろんな場面でお会いし、公私ともにおつきあいいただき、
定年になる前から、
「これからもずっとよろしくね」
と言ってくださった。
さて、久しぶりの再会。
いつもお会いする場所として選びのは池袋のデパ地下ではなく、
デパ上。13階のレストラン街にある、点心で有名なお店だ。
遅い会食は避け、17時に待ち合わせ。
さて、1年ぶりに目の前に現れたその紳士。
なんと、お鬚をはやされ、大変カジュアルないでたち。
一見、別人にも見える、変身ぶり。
「あらま~、ひげ、びっくりしました。でも、似合ってますね」
会った瞬間、ちょっとだけ恥ずかしそうであったが、すぐに普段通りの笑顔。
「そう~~。まあまあ、こんな感じですわ。」
スーツを脱ぎ、ネクタイを外し、重い肩書きの名刺を持たず、
まさに「素」の人生を歩き始めたその方は、本来の、ご自身が求める道を
歩き始めたようだった。
美味しい小籠包をつつき、締めにはサンラータン。
前にもご一緒した食事であるが、今回は、より、その方がリラックスして
おられる様子が伝わり、いい時間が流れた。
「いやー、実はある資格をとろうかと、勉強しはじめているんだ」
へえ?まったく違う道。
これは、ずっと何もしない1年を過ごし、何かせねばと思い始めたことと
これならこれからの自分に役立ちそうだという点からの選択だそうだ。
頭を使う時間が必要というのも、わかる気がする。
ほどよい刺激を交換したあと、硬く握手し、再会を誓い、別れる。
あとで届いたメール。
「昨日は楽しい、濃い時間をありがとう。私もマイペースで
がんばります。」
マイペースか。
組織の中に、組織の上にいると、そんなことは言ってられなかったのだろう。
そんな素顔の、素手の紳士に出会うことが多くなってきたが、
人の魅力は、気づきにより、その人次第で、どんどん磨かれていくのだろう。
と思う。
ずっとマイペースの私ではあるが、「素」を大切にしながら、
まさに「素敵な人生」に向かって生きていきたいと改めて思った次第。