桜は「なごり花」。

東京では、すでに満開の桜。週明け、平日でも花見を楽しみたいと人がであちこちで、
空を見上げ、スマホをかざしている。
この時期に訪日した海外からの観光客にとっては、ラッキーかもしれない。
メニュー豊富な東京観光に花見が加わるのだから。

さて、その桜・・。
私にとっての東京の桜は、
「なごり雪」ではなく、「なごり花」だ。

混雑が苦手なため、
千鳥ヶ淵をなるべく通らないようにしながら、市ヶ谷のお堀を遠目に見ながら、
上野公園にも行かず・・・桜というと人が湧いてくるのが嫌だと思いながら、過ごして
きた。観桜するならば誰もいない、早朝、散歩やジョギングをしながら・・という時代も
あったが・・。

ここ2~3年は、家の前にある大きな桜の木の見晴らしがよくなったため、
部屋から、目の前の桜を観るという、贅沢な貸し切りの花見を楽しんでいた。

そして、昨年の今ごろは
「ああ、東京の桜は、これで最後」
と思い、複雑な思いで何度も何度も写真を撮り、ずっとみつめていたのを、
今改めて思い出す。

あれから、1年。
あっという間の1年。

東京は帰る場所でなく、訪れる場所になったが、
約四半世紀過ごしたこの町は、この季節になると
さすがに、ちょっと懐かしくなる。

3月末に咲く桜は「なごり花」。
きっと今日も都内のどこかで
昨年の私と同じような気持ちで桜を見上げている
人もいることだろう。

雪の次は桜。
日本の四季はやはり抒情的であり、そこが良い。

あれから1年。
再び、我が家の前にあった桜に会いに行く。
「こんにちは。お久しぶり・・・」
「よ、今年も咲いたよ。」
と桜の木からの声が届いたように感じた。

カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク