「りんご」は何も言わないけれど。

美空ひばりの歌で「りんごの歌」という名曲があった。
小学生の頃、カセットテープでよく聞かされたし、好きで覚えていた。
あの歌を聴きながら、「りんごは何にも言わないけれど・・・」
という歌詞がやけに頭に残っていた。擬人化された歌詞というのは、
何故か覚えてしまうものだ。

りんご・・・。大人になってから、時々箱入りでいただくことがある。
信州の、山形の、青森の・・・。
そういえば、先日は山口もりんごの生産地であることを知り、
驚いていた。日本の各地には、その地域の自然に合わせ、
多種多様な実りがもたらされる。

りんごは、どこか控えめな優しさという印象。
そのみずみずしさと甘ずっぱさのせいか、
イチゴやスイカのように飛びつかれるスター性は
ないかもしれないが、国民的フルーツのひとつ。
そう、大人になってから、どんどん好きになってきた果物だ。
ある人からは、皮ごと食べてくださいね。と教えられた。
確かに皮ごとの方が、きれいで、栄養もあるようだ。

この年末、福島からりんごが1箱届いた。初めてだ。
中に放射性物質簡易検査報告書が入っていた。
この書類が同封された食物を見たのは、実は初めてだ。
ああ。これのことだ。農家さんも大変だなとつくづく・・。
この書類があっても、なくても、私は福島のりんごを
なんの迷いもなく、美味しくいただく。

送ってくださった方は福島出身の方で、
ご自身のふるさとを応援されているだろうし、
自分の故郷のモノを贈りたいという気持ちもよくわかる。

箱の中のその書類をはずして、りんごたちを眺める。
「りんごは何にも言わないけれど・・・」
あの歌がよみがえった。

りんごたちは、どんな気持ちで世間を見続けてきただろう。
りんごもえらいし、農家さんもえらい!
がんばってほしい。
世間が忘れそうになっても、地元の方たちは
ずっとずっと戦っておられるのだ。
りんごは何も言わないけれど、じっと見ている・・。

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