レストランは、人生の素敵な思い出づくりのために・・・。

世の中には、いろんな店がある。
さまざまな商品やサービスを売る。
お客はモノを買ったり、食事をしたりしながら、その対価を払う。
「いらっしゃいませ」ではじまり、「ありがとうございました」で
結ばれるお客とお店の関係。

一度開店したら、永久に営業・・・というのはなかなかむつかしい。
もちろん創業何百年、何代目と看板を掲げている老舗も多く存在するが、
とくに都会の店舗では、賃貸条件や市場環境の変化で、ある期間を
過ぎると閉店するという店も、決して珍しくない。
そう、開店することも閉店することも珍しくない。それにより商業施設は
また新たな店舗の出店を迎え入れることで新陳代謝を図り、新たな利用客を
呼び込む。
世の中は開店には注目し、何かと話題にするが、閉店にはあまり目を向けない。

このたび、何年も時折お世話になってきた都内のレストランが閉店することになった。
近隣のビジネスマンや観光客に愛された和食レストラン。
昼はビュッフェで、夜はテーブルサービスのお店として。時間帯によっては、
団体客も招き入れた。

今回の閉店は、会社としての、将来を見据えた前向きな閉店。
近々、近隣に新店舗をオープンさせる予定でその準備も進んでいる。

とはいえ、そこの店でもう食事ができない・・という名残惜しさで
営業最終日のランチタイム、営業時間の前に店に向かう。
当店を愛用されたお客様と待ち合わせをする。

もうおしまい。と言われると、本日限りと言われると行きたくなるのが
人間だ。
営業時間前15分前に着いた。
まさかまだ誰も並んでいないだろう…と思ったらすでに
何組かのお客さんが並んで待っていた。
とくに最前列の紳士は常連客とお見受けした。最終日とわかって
来られているようなオーラを感じた。

開店時間までの間、今日で営業を終わる店舗を店の前からもう一度
眺めてみた。何度も何度も足を運んだ店だ。いろんなお客さんとここに
来た。その中では、再び食事を楽しみにされながら、
帰らぬ人となった人もおられた・・・そんなことも思い出す。
お元気だった何年か前、一緒に誕生祝いをし、喜んでいただいた1枚の
写真が今もスマホに入っている。
また、この春、両親を東京に招いたときも、ここでお世話に
なった・・。などなど、ここで過ごしたわずかな時間ではあるが
いろんなことがあったな・・・と、忘れかけていたこの店での思い出が
次々と蘇り、そこでのさまざまな人との交流が懐かしくなった。

そして、最後のランチをいただく。
最終日でもあるためか、12時になる前から店内は賑わってきた。
今日は早めに退散しなければ、店に申しわけないと思いつつ
居心地の良さから、しっかり楽しませていただく。

スタッフたちは少し休んで、次の勤務地へ異動していく。
「お疲れさんでしたね。いろいろありがとうね。また次の店へ
行くね。今日最終日がんばってね」
まだ会えることはわかっているが、この店での最後の時間が
愛おしく思える。
営業時間前から並んで待っておられた最前列の紳士はやっぱり
常連さんだった。お店のスタッフに声をかけておられ、
存分に最後の食事を味わっておられた。

店は単に美味しい料理を提供しているだけではない。
お客様を迎え入れる快適な空間があり、スタッフのおもてなしがあって、
訪れる人たちに、喜びと楽しみの時間を提供する。
そう、サービス業は総合力だ。

その時間は、一期一会。その時間がお客様の人生のなかの
大切な思い出になっていく。

開店するときには、お客様のどんな思い出づくりのお手伝いが
できるだろうかという思いを持ちながら
がんばってほしい。

閉店と言う節目に接し、店なるものについて、改めて考えてみた。
長い間、お世話になったこの店に、
改めてお礼をいい、お店に「お疲れ様でした」と告げたい。
形は変わっていっても、思い出は永遠である。
思い出に残るお店に・・・。

そして、お店はお客様の人生に、素敵な思い出を残す、創る
場所であり続けてほしい。
と、改めて・・・。

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