曇天強風の日の出会い。

風の強い寒い平日の午後。知多半島に近い産直売り場に向かう。
愛知県は意外に豊かな農業県でもあり、新潟に負けないほど
安価でいい野菜果物が手に入る。
そして、日本一の産直売り場もこちらだそうだ。
そこには大きな屋外イベントができる敷地があり、連日いろんな
アトラクションを開催しているようだ。
その日、まず目についたのが「移動動物園」なるもの。
ロバや犬など、小型の動物が囲いの中に放し飼い。有料で
動物とのふれあいができるというもの。
「へえ。移動動物園って日本にもあるんだ」と、感心していると
その背後から、「ここはどこ?」と思ってしまう異国情緒漂う
バグパイプの音。最初は、移動動物園の効果音かなとか
思ったが、いや、どうも生の音色だ。いい音色だ。
「へえ、バグパイプの生演奏をこういう場所でもするんだ~」
投げ銭用の袋か帽子がおいてある。そう、チップ制のライブなんだ。
ふとNYの地下鉄で弾いていたギタリストを思い出した。

と、これらの全体的な面白さに興味が沸いたが、
まずは、売り場で目的を果たし、野菜などを購入。
そしてしばらく経ってから、さきほどのイベントスペースに
戻ると、そのバグパイプ奏者が片付けをしていた。
楽器はもちろん、音響機器、電源装置等も
すべて自分で持ち込んできているのだった。
常々、持ち運びできる楽器であれば、どこでも演奏できるのに
と思っていたので、そのアーチストのおかたづけ風景を
見ながら、ひとり感心していた。
そして、なんとなく声をかけた。
「全部、持ち込んでいるんですか~」
そこからしばらく会話が続く。
「わたしも演奏はするんですよね」
と言うと、相手の表情が変わる。そう、もうここである意味
仲間のような感じになる。
名刺をいただく。
日本でも珍しいバグパイプ奏者であり、手回しオルガン、
さらにはディアポロもされるようで、ユニークな活動を
されている芸人さんなのだ。
とても興味が沸いた。
曇天強風の平日に、わざわざ
産直広場へ買い物にきて、こんな珍しいアーチストに出会えるとは。

お客様がまばらな、寒空の下、演奏しているとへこみそうになる
とのこと。でも、こういう出会いもあるから。。と喜んでくれた。
そう、平日の曇天強風も悪くはない。

このアーチストとも、何かつながっていきそうな予感を感じる。
彼も東京からこっちへ移ってきた人のようで・・。不思議な縁かも。

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