タクシーというのは面白い。
公共交通機関よりお金がかかる分、使い勝手の良い、
動く個室である。
運転手さんとの相性がよければ、最初に出会う地元の人として
会話も楽しめることもあることも多い。
最近では感じの悪い運転手という人にあまり出会うことがない。
礼儀が良い方(当たり前ではあるが)が圧倒的で、またいろいろ聞くと
きちんと答えてくれる人も多い。
不案内の町に行くとき、その街を知るには、タクシードライバーにたずねるが
良い。地元の人でありながら、いろんな人を乗せ、いろんなところに出向いて
おられるので、客観的な情報も得られやすい。
今回は、コンサート当日、駅から会場へ向かう20分ほどをタクシーに
乗って移動した。その街のことをいろいろ聞く。いいところ、大変なところ。
自分が知っているその街のことがあっているかを確認するにも有効だ。
さらに、「ちょっと〇〇を探しているので、直売所寄れますか?」
と無理も言える。「んん、どこにあったかな~」
記憶をたどりながら、直売所に寄ってくれる。そして車から降りて
その野菜を探している私のあとについてきて「ありますか?」
と聞いてくれる。親切なドライバーだ。
そして、次に、車内はリハーサル会場にもなる。
「ちょっと声出していいですか?」発声練習というよりも、
ちょっと心配な作り立ての曲を試してみたくなった。
「あ、どうぞどうぞ。」
そして、できたてのその街のことに歌詞を
かえた、いわゆる替え歌を歌ってみる。
「これ、この町のことを替え歌にしたんですけど、合ってますか?」
すると、運転手さんが
「いい歌ですね~。全部、この町のことが入ってますよ。よくご存じですね~」
と太鼓判を押してくれて、安心。よし、この替え歌は今日のイントロで歌うことに
決定・・・。ということで、タクシーがリハーサル会場になった。
いい運転手さんと出会うと、なんだかそれ自体が一期一会で、人生の縮図を
生きた感じすらすることがある。
おそらく、もう二度と会わないケースが多い。よく話す運転手さんであれば
人生を語りだす。初対面なのに、しがらみも面識もない分、自由に
話せる究極のコミュニケーションができる。
今、こうして書きながら、
ふと、NYのタクシーを思い出す。世界中の面白い話を聞いたな・・。
タクシーは移動手段というだけでなく、コミュニケーションの場として
考えても面白い。
「本番、がんばってくださいね!」
降りるときに、そんな言葉をかけられて、やる気が高まる。
なんだか、家を出るときみたいだ。
たまたま出会う運転手さん・・により、その次の時間がよりハッピーに
パワフルになれる・・・
というのもとても素敵なことだ。