私自身、移動も多いが、その都度荷物も多い。多くなる。
最近では、宅配業の発達で、30年前に比べれば
出張や旅の負担も少なくなった・・・とはいえ、
持たない移動はない。
現在はいかに持たないか、手に負担をかけないかを
いつも考えるようになったが、
私の母親は、80歳が近くなっても、荷物を持つ。
「これは、ここに行ったら人にこれをあげるから、
次は・・・ここでこれが要るかも。そのあと
買い物するかもしれないので・・」
という具合に、常に複数のカバン、袋物を
もっている。
今回は、母にボケ防止のため、ちょっとした
内職を依頼しようと、最寄りの駅で待ち合わせする。
すると、やっぱり複数の荷物で登場する。
このあと、出かける用事で使うものがいろいろ
入っているらしい。
おまけに、彼女は私を待つ間、駅の待合室で
小さな折り鶴をつくっている。いつも時間が
あれば、せせっとつくるのだ・・。だからその
キットも持参している。
と、そんな具合に、どこでも何かできるように
しているから荷物が増えるわけだ。
まあ、人生の時間を有効活用しているといれば
聞こえがいいし、これはもしかしたら、
私に遺伝している習慣かもしれない。
さて、内職(イベントで配布するグッズの
袋詰め)の小道具を渡す。
ハガキなど、400枚ぐらいある。
「ほんとうに、重くないの~?もてるの?」
「全然。大丈夫。背負っていくし」
と背中を見ると大きなリュックを背負っている。
おお、これを背負い、袋物をいくつか
もって・・・、で、近所の駅からは
自転車で移動するの?
母はいつもそんな生活をしている。
自転車がマイカー代わりで、雨さえ降らねば
荷物も運ぶ。
「背負えば、大丈夫」
彼女はリュックにいろいろ詰め込んだ。
どうやら、体重が軽いため、背中に重いもの
をもつことで、バランスもとれるのだという。
打ち合わせを済ませ、荷物いっぱいの母を
電車まで送り、「じゃ、お願いします」
と、別れる。
二宮金次郎か、京都の大原女かと思うほど
母が荷物を背負う姿は、偉大に見える。
いや、偉大だ。
そんな力持ちの母親を、心底尊敬し、
愛すべき存在だと、背中を見ながら見送る。
いつまでも、背負えるといいね。
でも、無理をしないで・・と心のなかで
言葉をかけつつ・・。
手に持てなければ、背負えばいい。
人間には、原始の時代から、生活の知恵を
生かせることがたくさんある。