私には父と呼びたい人が数名いる。
そのひとりは会社員時代の上司、Tさん。
経理部門の責任者で、私からみればお金のプロ。
独立するときも、「この人に頼んでおけば大丈夫だから」
といって、税理士さんをご紹介してくれた。
今もその事務所にお世話になっている。
お金をためること、お金儲けは身につけることが
できなかったが、まじめに生きること、真面目に
仕事をすることを教えていただいた。
独立後、19年経った今、この経理のお父ちゃんが
元気でおられるうちに・・思い、思いついたら
電話をしたり、会いに行ったりしている。
今は京都から伊東に移り住んでおられる。
奥様も亡くなって、快適な施設で生活していても
お寂しいのでは・・。
「今度、寄りますよ~。」
新潟から東京、そして名古屋への移動中に伊東に
立ち寄ることにする。
体調が気になるので、前日も電話をする。
「心待ちにしています!」
うれしそうな電話の声。
そして、伊東駅で待ち合わせし、
約1年半ぶりの再会だ。
駅前のかまぼこ屋で買い物をして
そのあと、お父ちゃんおなじみの居酒屋に向かう。
87歳というのに、酒も弱くなったといいつつ
ビールのジョッキを傾け、お料理もたっぷり
食べる。会話は日ごろの生活の話から、人生のこと、
家族のこと、そしてスポーツのこと、真剣に語るは
政治、日本のこと・・。話題が尽きず、予定していた
帰りの電車を1本ずらす。
「今日はたくさん食べられるわ。よー、食べたわ。
また寄ってな。なんなら、毎日でもええで」
施設で提供される、健康管理ばっちりのごちそうも
いいが、やっぱり下界で世間のなかでいっぱい話を
して食べる食事の方がおいしいはずだ。
「じゃ、三か月に一度ぐらい、寄るようにしますわ」
と答え、駅で握手を何度もして別れる。
何度も大笑い、くしゃくしゃの笑顔で、私の話を
「何?何?」
と、耳が遠くなっていても一生懸命聞いてくれるのも
うれしい。
今、
会いたい人、会わねばと思う人がいるならば、
会いに行くのが良い。
動ける方が動けばいい。動けるときに動けばいい。
親孝行は、ちゃんとしないと。
それは、感謝の気持ちを伝えるぐらいしかできない
のだが、それでも喜んで下さる顔を見ると、
こちらもうれしいのだ。
こんな風に、週末も移動が続く・・。
おなかも心もいっぱい。一番の幸せだ。