黒子に徹する人生の粋。

久しぶりに約10年前、仕事でお世話になった方と会食をする。
夏の後半は、暑中見舞いを書くように、懐かしい人にお会いし、
日頃のご無礼を詫びたくなったり、久しぶりにあれこれと話を
してみたくなるから不思議だ。
それは冷たいビールが美味しい季節だからかもしれないが。
さて、その紳士Iさんと、久しぶりのカンパイ。
ずっとある会社のナンバー2として、三代目社長を支えてこられている。
このIさんを見ながら、経営者というのは優れた参謀がいるかいないかで
輝き方が違うものだと、思っていた。
よき参謀は、トップの意向を十分理解しながら、周囲を固め、うまく立ち回る。
経営者も信頼して、現場を任せておられた。

さて、そのIさんに、なぜ参謀の人生を選ばれたのか?
と初めてきいてみる。
すると、若き頃に読んだ本のなかで、黒子として生きるという
ことに興味をもち、自分はこれでいこう!と決めたとのこと。
それから40年以上、その道一筋でトップを支え、会社を元気
づけ、あるときは切り込み隊長として部下を従え、現場を仕切って
こられた。

その黒子人生も、そろそろ終盤のようだ。
長年の単身赴任も終わり、夫婦で暮らすのは久しぶり、
いろいろしたいこともあるとのことで何より。
卒業の意思は自身の誕生日に明らかにされるそう、
きっとトップも部下も驚かれ、そして感謝されることだろう。
そんなIさんの仕事ざまがとても素敵だと思った。

会社とは、経営者は取りざたされるが、参謀はあまり表に
出ない。しかし、この存在があって、そのおかげで
社長は社長の仕事ができるのだ。

黒子は大切だ。
黒子はかっこいい。
Iさんと久しぶりにお会いして、改めてそう思った。

「卒業される前に、またカンパイしましょう。」
黒子の次は、何子になられるか、とても楽しみだ。

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