デパ地下、駅地下にお菓子やさんがあふれかえっている今日。スィーツの食べ放題などの
企画は、いつの時代も女子のみならず、男子も大好き・・というが、私にとっては、子供
のときに食べた、「洋菓子はハレの日の食べ物」と、思っていた時代のお菓子の味が最高
の味。。
たとえば、カステラ。そしてマドレーヌ。
いずれもザビエルをきっかけとし、西洋文化が日本に伝来してから、普及・進化したものだ。
マドレーヌはもともと巡礼のお菓子だったという歴史も興味深いし、
その昔マドレーヌのパッケージにはエッフェル塔のデザインが入っていたりして、
この「おフランス感」が、大好きだった。
そしてこの名前の音も文字も気に入っている。
いつかもっといかにも、という芸名を付けるときには「まどれーぬ マーサ」にしたいと
本気で思うほどに・・。すでに同名の曲もつくってきた。
そして、巡礼ならず、出張時の携帯食・朝食用にはマドレーヌをよく持参してきた。
そんな大好きなマドレーヌ。あの素朴で優しい味のお菓子がだんだん少なくなってきた。
私たちの親の世代の職人さんたちが引退されることが増えてきたり、流行りの、大手のお菓子屋に
おされて・・ということもあるようだ。
数少ない、ノスタルジックなマドレーヌのひとつが鴨川のお菓子やさんで販売されていた。
3年程前にその店の存在を知り、店に入り、懐かしき焼き菓子・バタークリームのケーキが
並んでいるショーケースに感動。
一目見て、口にして「これだ!」ととびつき、それからその街を訪れるたびに、大人買い
していた。
そして先月、再び訪れた。
「東京から鴨川へ来るたびに、寄らせてもらっているんですよ。
本当にここのお菓子は最高ですよね。美味しいですね」
すると、そこの女主人が
「そうですか~。実はこの店、7月2日に閉店するんです。40年以上やってきたの
ですが、もう高齢でできないというもんですから・・・」
この発言に衝撃を受けた。ここもなくなってしまうのか・・。
ひと昔前の、京都のマドレーヌ事件も思い出しつつ、私は購入したマドレーヌを大切に大切に
味わった。もう食べられないお菓子を味わう気持ちは複雑だ。
最後の1個を食べているとき、我慢できなくなり、鴨川のお店に電話をする。
それは閉店の3日前だ。
「あのー、マドレーヌ。できる数で結構ですから、送ってもらえますか?」
最初で最後のお取り寄せだ。
閉店後に本当に最後のマドレーヌが自宅に届いた。
「大変お世話になりました。思ったより多くの方に惜しまれましたが、70代を越えては
しんどいというので、やむを得ず・・・。ありがとうございました」
ご夫婦で40年やってこられたのだな~。
鴨川は私にとっても思い出の町のひとつだ。ここを訪れる楽しみがまた一つ減る。
どんなものでもいずれなくなっていく。
受け継ぐことも大切であるが、受け継がれず終わっていくこともある。
時代がまたひとつ・・。しみじみ、最初で最後のお取り寄せを泣きそうになりながら
いただく・・。
大切にしたいものが、だんだんなくなっていく・・のは自然の習い。でもやはり
寂しい。鴨川の青い鳥さん、ありがとうございました。長年大変お疲れ様でした。