行き付けのブエノスアイレス市内繁華街のタンゴ専門CD店にほんのお土産のつもりで、自分のファーストアルバムを持参したら、「お~、ロマンチック~」といたく感動してくれて、委託でも良かったらと店主が言ってくれたので何枚か預けておいたのが1年前。当然売れるわけはないし、それでも何か化学反応があればいいという程度でそのままにしてあった。
今回久しぶりに店に寄り、最近のアルゼンチンタンゴの動向なども聞きつつ、フォルクローレの楽器のことなど教えてもらいながら、さりげなく1年前に預けたCDのことを聞いてみた。結果は、やっぱり売れていなかった。「コマーシャルがないから、売れなくて。ごめんね。代金払えなくて・・・」とものすごく申し訳なさそうに言われ、その顔が忘れられない。いやいや、もともとそんなつもりはないし、ただ店で流していたらお客さんの問い合わせがあったというから試してもらっただけ。またおともと店頭で売るつもりがなかった商品だし・・・。と笑顔で答え、でも何がおきるかわからないので、引き続きおいておいてもらうことに。そんななか、次のアルバム(セカンドアルバム)もアイフォンから聴いてもらったら、スタッフ一同がとても気に入ってくれたのがわかった。店主が「ユーアー ビューティフルレディ」と英語で言ってくれたが、これは見かけのことではなく、夜のグランルーやノスタルジックルージュを聴いて、気に入ってくれた表現である。「今度来たらもってきて。まず自分が買う。そして店で前のと一緒に売ろう」と店主。1枚も売れてなかったのを申し訳なく気を遣ったのかな。でも、売ってあげると言われるのもうれしいが、自らが買いたいと言ってくれるのもまたうれしい。音楽業界はそれぞれ多大な費用もかけて、プロモーションを仕掛けながら、歌手を売り込もうとしているのだし、ここは南米、アルゼンチン。日本のちっぽけなシンガーの存在などここの市民や観光客が知る由がない。もちろんこの店頭でライブでもやらせてくれたら、ブエノス最大の繁華街であるから、反響はあるかもと思うが。
またジャケット1枚とっても、店売りしたいのかどうか?でまったく作り方も違う。
自分が創ったものでいろんなことを仕掛けてみる、世の中が見えてくる。
それにしても、店主フェルナンデスの顔が忘れられない。アミーゴ!がどんどん増えていく。
売れてなくてごめんね。
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