ある人と、やっとゆっくり話をする機会を得ることができた。
その人は、役者さん。ご縁あって、一緒に仕事をし、お近づきに
なった。初めてその人の生い立ち、芝居にかける意気込みなど
聞かせてもらう。
どうやら、地方から東京へ出てきて約1年。
京都から出てこられたというのも、何かの縁と思わせてくれた人。
その彼女、
「やったるで~」と思って東京へ出てきて、志半ばの日々、
最近は、どうも心が安定しない、本人いわくおちっぱなし・・
だそうだ。
「ふーん。不安定なんや。」
私はその言葉にひっかかりを感じた。
「でもさあ。みんな、最初から不安定なまま生まれてきて、
生きている間、基本は不安定なんじゃないかな。
不安定が当たり前と思えば、別にそんなことは苦しくないと
思うけど。安定を求めるから、不安定がつらいかもしれないけど、
もし、安定しても、また不安に思うよね。
地震が来るかもしれないし、事故に遭うかもしれないし、
生きるということは、基本、不安定と思っておいた方が
気が楽じゃないかと思うけど・・」
と話し始めると、彼女の目の色が変わった(ように感じた)。
「そうか、みんな不安定か。そう、そうやね!」
私は彼女にいろいろ話しながら、時々
「これは、あなたに言いながら、自分にも言い聞かせているよ」
と確認のように言う。
そう、自分だって、何か不安定な状態、心持のときは、しんどい。
そんなときもないわけではない。
でも、基本、何も保障されているわけでなく、世間と向かい合って
生身で生きていく・・それが人生よ。と開き直ってしまえば
気持ちも楽になる。と時々開き直るようににもしている。
だから、今ここにいることに感謝して、楽しくほどよく
頑張るのが良い。
「だって、好きで東京に出てきたんだからね」
彼女との会話は、不安定から夢に向かった。
「夢に向かってやらねばならないこと、やりたいことを100個
挙げて、それをひとつづつやろうよ」
役者での成功を目指す彼女の目は次第にきらきらして、
いつの間にかメモをとっていた。
人生は不安定だから面白いのだ。その面白さを私は彼女に
演じてほしい。
がんばって!私も頑張るから。
一緒におもろいこと、やろうね。
にこにこしながら、一緒に歌舞伎町から電車に乗って帰った。
京都から東京へ出てきた時代を思い出しながら、
心から彼女を応援し、一緒にがんばろうと思った夜、
まさに東京らしい時間となった。