天使と巡る、青空の墓地

前のブログに記載した尊敬するタンゴ歌手 ビルへニア・ルーケに感謝と哀悼の想いを奉げたく、彼女が眠ると聞いたブエノス市内のチャカリータという墓地に行こうと急遽決定。
しかし市内といっても不便なところにあるらしく、タクシーで往復するのが良いと聞く。
ホテルから乗ったタクシードライバーに、「墓地に行って、そこで20分待って・・・」と伝えると快諾、そして、そこの墓地はエビータらが眠る高級墓地のレコレータとは違い、ひとつの街のような大きな墓地なので、中まで一緒に行き、そして車を置いても一緒についてきてくれると言う。へ?そこまでもしてくれる?外で待っていてくれたらいいのに・・・?瞬間疑問に思ったが、そのわけは現地に到着してよくわかった。本当に広大すぎる墓地なのだ。そして中に車が入ることができる。車がないと移動が難しいほど大きい。この敷地内に女優・音楽家たちが眠る専用エリアがあり、そこに彼女の墓地があると聞いていたので車でその近くまで行ってもらう。さてこの墓地はすごい。要所要所に管理人の事務所があったり、立派な墓地警察があったりするのだ。教会があるのは言うまでもない。そして、こまめに墓地の整理や清掃などもされており、墓地内で働く人が多いのにも驚く。そんななか、ルーケの墓をタクシーの運転手が一生懸命探してくれた。墓地内地図を見ながら移動、音楽家・女優の墓地管理人にやっと会えて尋ねてみる。「間違いなく、ルーケの墓はここにあるはずだが?」管理人が「いや、ここには彼女はいない。家族だけが会える。一般には公開されていないのでは?」と意外な返事。そうか、今年亡くなったばかりでまだここにはいないのか。キリスト教のしきたりもわからないが、とにかくここにはルーケの墓はないとのこと。うーん、せっかく花を買い求め、ここまできたのに・・。タクシーの運転手はいつの間にか自分のことのように、熱心に墓を探してくれる。スペイン語で墓の管理人とやりとりしているので、よくわからないがどうやら、彼女はルーケに会うために東京からやってきたんだが・・・と言っているようだ。その気持ちがうれしくて、胸がいっぱいになる。タクシーの運転手なのにここまでしてくれるなんて・・・。そんなわけでお目当てのルーケのお墓は探せなかったが、その代わり、私が何年か前、この地に何度も訪れることになったもう一つのきっかけである、伝説のタンゴ音楽家「カルロス・ガルデル」やタンゴ音楽の巨匠たちの墓地に巡り合うことができた。みんな、ここに眠っているのだ。運転手はルーケの墓地を探せなかった私をかわいそうと思ったのか、他の音楽家たちの墓地を丁寧に案内してくれる。CDももっているよく聴く演奏家たちのモニュメントに感動する。また作家たちの墓地もあり、彼はタクシードライバーの域を越え、いつの間にか私のためにガイド役をしてくれている。そしてガルデルのお墓の前で、撮影も。「お墓なのに撮影していいのかな?」「ノー プロブレム!」。そしてわたしは彼を撮る。そしてルーケにと朝買ったブーケもここに置く。飛行機事故で不慮の死を遂げたガルデルのお墓にまさかやって来るとは。ルーケが導いてくれたのだと思った。彼女はここのどこかにいる。そしていつかモニュメントも建立されることだろう。
結局、約2時間近く二人きりで墓地めぐりツアーとなった不思議な時間。彼の名前は、マイケル エンジェル コッカ。そう、ミスター天使だ。天使が私をタンゴを生んだ偉人の墓に導いてくれた。見えないけれど、とてつもない大きなパワーを得た。フランチェスカの夢の歌詞に書いたように、「命果てても、花は咲いている」ことを痛感した。マイケル、グラシアス!ルーケ、いつの日かまた。どうぞ安らかに。miguel

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