このたび、初めて浅草の演芸場に足を運ぶ。20余年も住んできたのに、
いつでも来られると思って、訪れていなかった場所のひとつ。
五感で昭和を感じるレトロな空間。有名な芸人たちもここから巣立ったし、
今も、人気がある。テレビのお笑い番組の収録にもよく使われている。
でも、その座席に座り、ほど近いステージとの距離感を味わったのは
初めてだ。意外と小さい、200名入るかどうか?
この大きさが、ライブには程良さそうだ。硬い座席に座っての第一印象。
演芸場とは、なんともいえないノスタルジー漂う空間だ。
自分の興味もおそらく、時代とともに変化してきたのだろう。
どんどん懐かしいモノ、昭和の遺産に関心が高まっている。
そしてステージに立つ芸人を観ると、その芸人の芸そのものもであるが
その芸への向かい方、もっといえばその人の生きざまを
想像し、また観客に何を伝えようとしているのか・・そして
観客は何を求めに来て、何を感じているのか。。など
気になって追いかけてしまう。
1日、いろんな芸人のステージを見続ける。漫才からマジック、
物まね、コントから、新しいところでは発泡スチロール職人・・。
いろんな芸があるもんだ、いろんなことを考えて、それを
体現する人がいるもんだ。まず、そこに素直に感動する。
芸も時代とともに変わっていることを、実感する。
ただ、変わらない良さがある点も見逃せない。
人を悦ばせたい、楽しませたいという思いは不変であり、
見えない努力と、その道を選んで生きてきたという覚悟も
普遍だ。
4時間半、15組ほどの芸を見続けた。結構、修行のようにも
感じる。なぜか一生懸命見ようとするから疲れる。
そして、ハンカチが濡れるまで泣かせてくれた芸人さんもいた。
それは、一生懸命さが全身からほとばしる人だ。
それは話芸だけでなく、全身を使って、人にはできない
曲芸に挑戦する人。
瞬間芸は失敗してはならない。その緊張感は、まさに手に汗を握る一瞬だ。
その瞬間に命を懸けている・・そんな芸人には大きな拍手を送り、また
その姿に涙する。
それぞれの芸人から、感動の作り方を学ぶ。
カラダを使う人、歌で表現する人、言葉で感動を運ぶ人。
いろんな表現があるが、自分は何ができるだろうか。
1日見続けて、そんなことばかり考えていた。
人に感動を与える仕事は、やっぱり最高だ。
演劇をともにやった、俳優たちと同じ。
表現者は素晴らしい。
これからも、まだまだ研究を続けたい。
と、今になって浅草が改めて好きになり。
ふたたび演芸館に通いたくなった。