モンマルトルのわたしが眠っていた


「あれ~、これ。ああ~。あれだ~」部屋の片隅も片隅、引っ越ししてきてから11年以上、
一回も手を触れない場所にて見つけた1枚の額縁の絵が、これだ。
そう、これは私の20代後半の頃、パリのモンマルトル広場で描かれた。
おそらく27歳か28歳。会社員であった私は代休をとってか何かわからないが
パリに出かけていたのだ。

モンマルトルといえば、世界中から画家を目指して若きアーチストたちが集い、そこで客をモデルに
肖像画を、もしくはパリのモンマルトルの風景や、この丘から見下ろせるパリの町を描き続ける・・・
芸術家が活動する広場で有名だ。最近は行っていないが、25年前は間違いなく賑わっており、そして、将来のロートレック
も存在していたのかも・・。
そこでフランス語が話せなかったため、筆を動かす画家に興味がありながらも、言葉をかけずにきょろきょろ
広場の中を見ていた。そして、日本人らしき画家に出会った。パリで日本語が通じたのがうれしかったのを思い出す。
その人が描いてくれたのが、この肖像画だ。私の唯一の肖像画。
季節は冬。あまりに寒くてパリで帽子を買ったのかもしれない。
この肖像画、30代の頃は、ちょっと嫌だ、だから部屋の片隅に置きっぱなしにして、見かけることもなかった。
そうであるのに、今、観てみると、よく描かれている。そして自分だ~と思えてくる。
今の私に似ているというと、20代の私に怒られそうであるが、何か本質的な部分がよくとらえられていると
思うのだ。
なんだかとっても気に入ってきた。
この画家の男性は・・・。確か、名古屋出身だったような気がする。あのころ、ネット社会であったならば、
すぐ連絡とれるのであるが、その時代はそうではない。
それがまた何とも郷愁を誘う。
この画家さん、今もお元気か?まさか同じモンマルトルの丘にいるとは思いづらいが・・・
たぶん、どこかで会ってもわからないかもしれない・・が、もし、このタッチの肖像画をみたらわかるかも・・。
グラン・ルーの発想も何もない若い日の自分。この数年後に、同じパリからヒントを得て、独立するとは
思っていなかったが・・。

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