ルイスの行方が気になる。

ベネズエラの友。といっても会ったのは2回だけであるが、
彼とはその後もメールでのやりとりはしばらく続いていた。
初めて会ったのは、ブエノスアイレスのタンゲーラ。
食事しながらタンゴを観賞するという劇場レストランには
たいていカップルや友達で訪問する場合が多いはずであるが、
私の場合はひとり。そして同じテーブルで相席となったのが
同じく一人で来ていたこのルイスだ。
幸いにも、ルイスは英語も話したので、会話が成り立ち
ずっと会話を楽しめた。
同じスペイン語圏のベネズエラから、アルゼンチンへ
旅するというのもなかなか大変なことのようであったが、
彼は国営の電力会社で働く、エリートな青年という感じであった。
タンゴショーの合間に会話しながら、翌日が誕生日である
と知り、これは何かの縁だと思い、その翌日市内で
待ち合わせをし、再びお茶をしながらベネズエラと日本の
異文化情報交換を楽しんだ。
この青年の名は、ルイス。
彼は、生まれて初めて見た日本人が、私であるということで
とても感動し、彼がこれまでテレビや映画で見た
日本のイメージと私が違うということで、驚いていた。
ベネズエラ人が抱く、日本のイメージは仕事人間、
クール、忙しそう・・・とにかくベネズエラとは違うんだ
と面白く語ってくれた。
いつかベネズエラで会いましょう。
いつか東京にもおいでね。
といって、別れたあとも、CDを送ったり、スペイン語交じりの
メールをもらいながら、しばらくは連絡が続いた。

が、そのうち途絶えた。
そして、時折、ベネズエラのニュースを聴くたびに心配に
なり、ルイスはどうしているんだろうか?と思い、
最初はメールをし続けていた。
が、返事が来なくなった。

さらに、今、政情が不安定だ。危険な状態だ。

ルイス、どこにいるのか?
無事なのか?ブラジルへ逃れた人も多いというが、
ルイスの家族はどうしているのか?

たまたまあった一人の異国の友から、その国のことを
心配したり応援したりするようになる。
今も、ルイスとのバカげた会話が懐かしい。

きっとタンゴの魅力が、コミュニケーションをより
楽しくしたのだろう。

ベネズエラはじめ、今、危機状態にある国々が
平和であり、穏やかに生活できるようになることを
心から祈っている。

ルイス、元気でいて!

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