現役~会社経営・町づくり~を引退後、自らががんに侵されながらも、
お母さまに寄り添い、お母様とともに暮らし、100歳で亡くなるまで
献身的に介護されてきたMさん。
最愛のお母さまが亡くなられて半年以上経過し、その後お元気にされているのかと
心配していた。
久しぶりにお会いし、Mさんが好きなお花のアレンジメントをご仏前にもと
お渡しし、その後の様子をいろいろとお聞きする。今もお母様のことを毎日
思い出すと、最近はじめたという短歌に込めた思いとともに、噛みしめるように
話しはじめられるのをお聞きし、胸が熱くなる。
時間の経過とともに、静かに思い出とともに寂しさがこみ上げてくるの
かな・・・。Mさんの口から出てくる、お母様への悔いの言葉に、あれだけ
お世話されていたのに、それでも亡くなってしまうと、もっともっと・・と
思えてくるものなのかな・・。とこれからの自分の親への向かい方を想像する。
しばらくすると、Mさんが、バッグから1冊の印刷物を取り出す。
「これは、母のこと、わが家のことをまとめた一冊です。
本当は母の100歳の記念日を目指していたのですが、自分の体調が思わしくなく
結局今になってしまいました。これは身内だけに配ったもので少ししか
刷っていないのですが、いつも気にかけていただきましたし、ぜひお読みいただければ
・・・」
と私に渡された。
「へえ?そんな大切なもの、他人の私がいただいてよろしいんですか?」
「はい、よろしかったらぜひ読んでやってください」
その本を開いてみると、Mさんの家族のことが、子供でもわかるように、
写真や資料も入って、読みやすく構成されている。
「姪っ子たちから、『おばあちゃんのことがよくわかりました~』って言われました。
よかったと思っています」とMさん。
出来上がった際には、お母様にお供えされたことだろう。
Mさんは、どこまでも親孝行の人だと思った。
その自費出版の一冊は、ページ数はそんなに多くないが
ずっしりMさんの思いが感じられ・・。
真似をすることはできないし、私は私のやり方でよいが、
家族を大切にする。という当たり前のことをきちんとできるかどうか
そして、大切なことを後世に残せるかどうか・・
については、お手本とさせていただこうと思った次第。
今、Mさんの健康状態が何より気がかりだ。
まだまだ一緒に、世の中のあるべき姿について、人としてすべきこと
について教えを乞いたいし、Mさんに元気の素をお伝えしたい。
人生、思いを一冊に残す。
やっぱり、本づくりはいい仕事だ。