三人の父がいる。
ひとりは実家の父親であるが、
二人は会社員時代お世話になった上司で、いわば京都の父であり、
仕事の父。
ひとりは経理の専門であったため、私の仕事をずっと心配しながら
「ちゃんとやっとるか、確定申告は終わったか」
と80代後半になって、施設に入っておられても、心配してくれる
そんな父。
もう一人の父は、マーケティングや印刷のことを教えてくれた
また京都人の流儀を、酒飲みの哲学を教えてくれた。
NY出張や東京転勤、アジア各国の出張を「女なんかに」と
いわれていた時代にいつも背中を教えてくれた、ありがたい父。
二人とも、会社をやめてから約20年ずっと変わらず、見守って
くださり、応援していただいている。
さて、そのマーケティングの父。年賀状が来ていたが、3か月近く
メール返信がなく、今回久しぶりに再会。
再会するときには、京都らしい喫茶店でと。それもいつもの楽しみ。
・・・ちょっと痩せているような。
「ちょっと痩せてません?」
たずねると、昨年末に脳梗塞で自宅で倒れたとのこと。
家族がいたので、すぐ病院に行けたため、1か月の入院と
リハビリで、奇跡的に半身不随になることもなく、
普通の生活に戻れたとのこと・・・。
そんなことがあったのか。
思えば、ここ数年、何度も違う病気でも入院され、元気になられては
京都のソバ屋でカンパイしてきたが・・。
「お願いですから、死なないでくださいね。
私が生きている間、ずっと見守ってほしいですから」
と言ったら
「それは無理。先に逝かしてぇなあ」と弱弱しく笑う。
わかっているけど、でも私を置いていかんといて、と
思ってしまう。死ぬまでアドバイスをもらいたいのだ。
この京都の父たちは、私の自立を応援してくれた父たち。
あと何回会えるかな。
もっと会いに行こう。
「ああ、久しぶりに会えてよかった。楽しかったよ。」
固い握手をして四条河原町の交差点で別れた。
何度も何度も後ろを振り返って、ちゃんと歩いているかなと
見えなくなるまで見ていた。
なんだか、だんだん、大切な人が・・・。
生きるのは、長生きはしんどい・・。
それもわかりながら、人は大人になっていくのかな。
頼むから、先に逝かんといてぇな。