1枚の企業広告をみつけたことから、白熱電球への尊敬の念が生まれ、作家魂に火が付いた。
その広告が、ここにある1枚の新聞広告。あまりに衝撃的で、日本のモノづくりの、時代の変化を表現する作品として
評価され、作家の目に留まった。
そのことがなければ、この劇は生まれていなかったのかもしれない。
今回、おかげさまで無事終演した作品「中ノ嶋ライト」は、
白熱電球を製造する現場=日本の高度成長を支えた明かりの歴史を思い出させてくれる、メッセージ性高い作品。
この作品の台本を渡され、一読したとき、この作品はやりがいがあると確信したのが3か月ほど前。
それから、作家にこの広告の企業に対して、手紙を出すように提案した、
白熱電球を作ってきたその会社に、こんな白熱電球の応援団がいるということを、どこのマスコミよりも先に
知らせるべきだと。
それから、作家本人がその企業の社長宛てに手紙を書き、私も見せてもらい、「いきましょう!」と背中を押した。
経済紙はじめ、厳しい話題が多いこの企業のトップにこの手紙を出すのは・・・というこの何ともいえない
タイミングも気になったが、その心配をよそに、その会社から返事がきた。
「マーサさん、Tさんから、連絡ありました。当日来てくださるそうです!」
作家がうれしそうに報告してくれた、
言い出しっぺの私も、心から嬉しく、安堵した。
演劇もマーケティング的に考えたい。見てほしいターゲットが必ずいるはず。
ましてや、今回のこの作品は企業で働く、これまで演劇に縁がない人にも知ってもらえるいい機会になる、
そんな素材をもった作品だ。
おかげさまで、初日から千秋楽まで、毎日のように電球を作ってきた会社の方々が、かわるがわる劇場に
足を運んでくれた。
これまで演劇に興味がなかった人も、何十年ぶりに劇を見たという人も・・。
そして、大変喜んでもらえた。無理してきてよかったとの言葉をいただいた。
作家がその企業さんに会え、感謝されている姿を見て、作家冥利に尽きるだろうなと
わたしも自分のことのようにうれしかった。
見てほしい人に見てもらう。それは劇が好きという客層だけでなく、コンテンツの内容によっても
客層を広げ、新たな演劇ファンになってもらうこともできるのだ。
演劇を限られた世界から、よりマーケティング的に。
前にも書いたが、音楽も演劇も、今の時代に求められるべき、リアルかつ感動を伝えられる、
メッセージ性高い媒体、コミュニケーションツールなのだ。
電球メーカーの方たちにも出会い、意外?にもその人が私の演奏にも興味をもってくださって・・
このご縁もまたうれしく・・・・。
電球が人々の暮らしを照らした時代を思い出しながら、懐かしくあたたかい気持ちを
持つことができた貴重な経験。
すべては、1枚の広告からはじまった・・。