演劇の世界に、今回少し関わるなか、そういえば・・と思い出したことがある。
学生時代の卒業研究テーマである。
もう記憶もかなり薄らいでいるが、哲学者コリング・ウッドの芸術論など
かなり参考にしていた。
そのことを、今回の公演中に思い出した。
芸術とは、作家と演者と観客との三者が一緒に創りだすことで成り立つ。
そう、いくらいい作品を作っても、それを表現する人がいなければ、
そして観てくれる人がいなければ、成り立たない。
そのことを、常日頃のライブでももちろん無意識的に理解しているが
この「演劇」という様式の芸術はその究極のかたち。
役者もお客さんによって演技が変わるし、日によっても違うし・・・
極端な話、毎日同じ作品を演じるとしても、観客が変われば絶対に違う
作品になる・・。
今回のピアノ演奏はステージの上ではなく、観客席の一角で演奏を行うため
観客と同じ方向を向いている。
観客の息づかいは私なりにも、感じるし、舞台にいる役者も彼らなりに
観客の反応を五感に感じながら、表現し続けるのだ。
誰かが笑えば誰かも笑う。どこかで鼻をすする音が聞こえれば、連鎖反応・・
などなど・・・とにかくいろんなアクションが、作品の中に溶け込んで
いくのだ。
このデジタル社会になっても、演劇というアートは多くの人々に支持され
また役者を目指す若者も多いが、これはきっとこのコミュニケーション
スタイルにあるのではないか・・。
毎日、役者と一緒に過ごす時間のなかでコミュニケーションクリエイター
として、学ぶことはあまりに多く、あっという間に時間が経つ。
中ノ嶋ライト 下北沢 「劇」小劇場で12日まで公演。
詳細はマーサ公式サイトから