小説ってすごいと思わせる名画。

待望の遠藤周作の「沈黙」の公開となった。
長崎歴史学アドバイザーの先生から、この映画化の話は
2年前から聞いていたが、なんとメイド イン ジャパンではなく、
アメリカ映画。タクシードライバーなどで著名な
イタリア人監督、スコセッシ監督によるものだ。
この監督の心をとらえ、30年近くの歳月をかけて準備された
作品。撮影は主に台湾でされたと聞き、確かに長崎の辺境の町と
台湾の海沿いの町は共通点があると納得したが、撮影前の
調査に監督は何度も長崎を訪問していたようだ。

キリシタンの惨い弾圧時代の中の宣教師たちの選択について
描かれたこの作品、原作を読んでいる以上に、何度も目を
覆いたくなるような残酷な場面があり、しかもその場面は
作り話ではなく、本当にあったことを遠藤周作が取材し、
書き上げたということを知り、衝撃を受けていた。
それだけに映画に寄せる興味はひとしおであった。

実際、その映画は・・・確かに予想通りに、よくあの難しい作品を
映画化した・・と思うほどに、よくできており、
映画だから表現できるダイナミックな描写は素晴らしかった。
おそらく、映画界の各賞を受賞するだろう。
でも、日本での受けはどうか?クリスチャン以外の人、長崎以外の
人、原作を知らない人にとって、この作品はどう映るだろうか。
ということは気になった。

そして今回映画を観て改めて、原作のすばらしさ、遠藤周作が
書いた小説のすばらしさを痛感し、感動した。
あの原作があったから、映画になるし、
原作だけで十分、この絵が想像できていた。

映画には映画の魅力がある。それは五感で感じることができ
よりリアルであるという点。
小説は文字だけ言葉だけで、想像により世界を創造することが
できる。読者はその世界への旅人になることができる。
文字だけで、言葉だけで・・。作家の力は凄い!

一人でも多くの人に、見て、読んでほしい。
明日からこの舞台となった、長崎・外海へ再び足を踏み入れるのも
偶然ではない。

カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク