以前、ボランティアで通っていた認知症の病棟。毎月出かけていき患者さんの前でふれあいコンサートと称して、ピアノを弾き、歌い、おしゃべりをした。あのときの患者さんたちの反応は今も忘れることができず、瞬間ではあるけれど、音楽がその人を元気づけたり、勇気づけたりすることがあるということが実感できた。心に灯を点す、情熱を蘇らせる、記憶が戻る・・・いろんな反応があることを知った。そしてそのボランティア活動を支えてくれたひとりの友人。彼女は知り合ってから脱サラして看護師になった。本気でなければできない転身。彼女がずっと私の演奏を聴き続けてくれており、それを最近の訪問介護でも生かしてくれているという。あるお宅でのこと。そこにご高齢のご夫妻が住んでおられ、ご主人はかつてピアノが好きでよく演奏されていて、ご自宅にもピアノがあるとか。いろんなことがあって体調を崩され、精神的にも安定せず、食事もままならぬ状態であり、家族もお困りであったが、彼女がたまたま私がライブで弾いてきたのをずっと見聞きしていたため、ピアノがお好きなご主人に「〇〇さんピアノ弾きますか」と言うと「いいよ」と二つ返事で演奏されたり、ついには私がライブで弾いてきた曲の名前を挙げるとその曲を弾いてくれたり・・・ということがあったとのこと。リクエストに応えてくれた・・ということをその看護師の友人はとてもうれしそうに報告をくれ、さらにはもっとリクエストしたいから、この前演奏した曲のリストを見せてほしいと言ってくれた。奥様も歌がお好きだそうで、愛の讃歌は自ら少し歌ってくださったとか。彼女は、これからもその訪問先で、自分が知っている曲をもっと彼にリクエストしたいという。それが意欲を維持できるお手伝いになるのであれば・・と。直接的であれ、間接的であれ人を元気にすることに関われることがとてもうれしい。音楽はやっぱりハッピーコミュニケーションツールだ。その意味をこれからも伝えていきたい。