実家へ帰ると、親と買い物にいくことが多い。
といっても、野菜を買いに行くだけだが・・。
老夫婦の栄養源をたまに買ってあげるのが、
プチ親孝行。
かごのなかに、好きなものを入れるたわいもない
時間は、とてもいい時間だ。
東京ではお目にかかれない、産直の手ごろな野菜を
調達できるのは田舎の魅力のひとつだ。
何年か前から、産直売り場へよく出かけていた。
アッシーはいつもどおり、父だ。
品揃え豊富な売り場は朝の開店時から、駐車場が満車になるほど
人気だ。
同じ大型店舗でもナショナルチェーンのスーパーより、産直広場が人気だ。
朝採れの野菜であることと、値段が安いのが魅力だ。
ということで、ずっと気に入っている産直売り場があるのだが
今回は、母が「今日は違う八百屋へ行こう。いいところみつけたから。」
という。
そしてそのおすすめの店に向かう。
駐車場もなく、大きな店ではない。路面にあるため、アッシー君は店内に
入らず、路上に停車、そのまま車中で待つ。
長く待たせると怒りそうだから、そんなにゆっくり買い物はしていられない。
急いで急いで・・・。
なるほど、店内に入る前から、野菜や果物が店頭から
あふれている。
どれもこれも新鮮。多くが岐阜産・愛知産というのがいい。
ぶどうや、すいか、いちじくから、枝豆、なす・・。季節の美味がずらり。
母は
「ここの野菜は品がいい。新鮮で、こんなに大きくて、たくさん入って、安い」
とべた褒め。
ついつい、かごにたくさん野菜を入れすぎてしまうほどの安さである。
東京へ送ってもそれでも東京で購入するより断然安い。
おかげで、段ボール1箱分の買い物となるが、お財布の重さはあまり変わって
いない。
帰り道に母が言う。
「あそこの店は品がいいんや。産直の店は、農家がただ自分のところでとれた
ものをもって店に並べるだけ。でもあの店は、いいものをちゃんと選んで
店に置いている。だから違うんや」と。(方言で話すのでこのままではないが
このような意味のこと)
私は野菜の品質や価格よりも、この母の発言に驚いた。
「この人、わかっているな~。」
そう、店とはいい品を選んでお客様に安く提供できる店がいいお店。
産直売り場とは本来、「お店」とは違うのかもしれない。
77歳になった母は、腱鞘炎の私の代わりに、野菜を入れた段ボールを
持ち運ぶ。頼もしい限り。さすが、農家出身で力持ちだ。
そう、産直売り場で売っているものは農作物であり、「製品」。
八百屋で売っているのは「商品」なのである。
その専門用語はわかっていなくても、母はその違いをちゃんと理解している。
この人にはもしかしたら、おそるべしマーケティング感覚がある。
敵に回したら、怖い消費者かもしれない。
と、いろんなことを思いながら、
またあの八百屋へ一緒に行こう。
高級なものは買えないが、野菜ぐらい肉ぐらい
好きなだけ、買ってあげたい・・。
と、
届いた段ボールを開けながら、思った。