家よりも、お金よりも、何よりも・・・

その日、新潟駅からタクシーに乗る。台風の影響か、こちらでも雨が強くなっている。
びしょ濡れにならないように荷物を乗せ、自分も乗る。
宿泊先にまず寄ってもらい、ひとまず荷物を預けてから、仕事場まで乗る。
15分ほどの乗車時間。
いつものごとく「暑いですね~」とか「雨がすごいですね~」と天気の話から
運転手さんの反応により、その後の会話が変わる。
その日の運転手さん、気さくに話をされる。
天気の話から、公共交通機関が繁忙期には値段が変わるという話に驚き、気が付いたら
道を間違え、謝られ・・・そんなこんなで話が弾み・・。台風の話から、地震の
被害の話になり・・。「せっかく家を建てても、地震や台風で流されたり、倒壊す
るかもと思うと、何も持たない方がいいのではと思ってしまいますね」と私が
言いだすと、運転手さんが「そのことに関して、私も思うことがあります。家が
流されても壊れても、愛する人とかペットとかいなくなったら・・それが一番
こたえます・・・」
ちょっと気になる言い方だったため、「運転手さん、もしかして??」
とおたずねすると、この春に奥様が亡くなられたとのこと。
時間が経てばたつほど、さみしくて、何も楽しいことなんかない・・・というお話に
返すことばが見当たらない。
しかし、最近、自分もいつもそのことを考えているので、その気持ちを想像しながら
言葉をかける。

一緒に人生を終えるということはなく、いずれはどちらかがどちらかを・・。
そんな日は来てほしくないが、いずれ・・。だから今を大切に生きるしかない。
運転手さんは、そんな言葉も普段心の奥にしまっておられたのかもしれない。

車をおりるとき
「お寂しいと思いますが、奥さまの分まで頑張ってくださいね。いつも見守って
くださっていると思います。またそのうち、お会いしましょう。どうぞお元気で~」
と声をかけると、運転手さんも元気に言葉を返してくれた。

家もお金・・・よりも、やっぱり愛する人。
人を生かす、がんばらせるパワーの源は、それに尽きる。

いつまで?と思いながら、今の時間を大切にすることが大切だと、改めて
思い直す。

時間って、ときに残酷だ。でもいい時間もたくさんある。
今日から9月。今日は母の77歳の誕生日。今年も迎えられて、よかった。

いつまでできるかわからないが、大切な人を大切にしよう。

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