リクエストには必ず応える努力

1年前のライブでのこと。演奏終了後、ピアノのそばに来られた一人の紳士。「タンゴ、やってほしかったな~」そう、そのときはプログラムがマンネリにならないようにと、アルゼンチンタンゴをプログラムに入れていなかったのだ。ああ、そんなに楽しみにされていた方がおられたとは失礼した・・と少し後悔。
そして1年後、絶対に入れなければと思っていたため、そのように準備していた。同じお客様が今回もおいでになった。開演前、お席に行き「今回はやりますからね」と言ったら、瞬間不思議そうな顔をされていた。そして、アルゼンチンタンゴのメドレーを演奏した。「昨年、演奏後にやってほしかったとおっしゃっていただいたので、今回は復活させました」とMCを添えた。そのお客様は演奏中、目を閉じてじっと聴いておられた。そして演奏終了後「1年前に言ったことをちゃんと覚えていてくれていたとは、大したもんだな。」と感心してくださった。
なんだか約束を果たしたような気がして、小さな肩の荷が下りた。すると「ブルースはできるの?」とおっしゃる。また、他のお客様からは休憩時間に「あのー、リクエストっていいの?『月がとっても青いから』という曲がすごい好きでいい曲なんだけど~」とじっと目を見て言われる。うーん?その曲は耳にしたことがあるけれど、歌ったこともないし、ところどころわからない・・・。歌詞も知らないし・・。でもそのままにほっておくと、そのお客様の心の中に残念~という気持ちだけが残ってしまうので、とりあえず歌詞をお客様から聴いて即興で試みてみる。知らない曲は弾けないのが当たり前であるが、お客様に助けていただき、なんとかその場を収めた。さらに、今回弾いたショパンの夜想曲~あるお客様には「6年間待ちわびた曲だった」とも言われ、偶然選曲したが良かったとも思った。心の中のリクエストだったのだ。
お客様は時にはわがままになる。でも、その一声が次への進歩に必ずなる。また、相手が何を望みそうか・・を考えて企画することも大切だ。マーケティング発想の演奏会づくり。
お客様が求めることをいろんな角度から。やっぱりこの試練は自分にとって究極の学びの場でもある。

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