長崎の五島列島には50以上の教会が存在している。そのなかでも上五島という島には
海沿い、坂の上、山の中に29もの教会が建立されている。ひとつの島の中あちらこちらに
白い十字架の建物を見つけることができる、日本でも稀有なキリスト教の
歴史が現存し続けている島である。
この地には、キリスト教がザビエル来日後、早くから布教されはじめたが、弾圧時代
には長崎市の浦上から外海へ逃げた信徒たちが、さらに辺境を目指し、平戸とこの上五島に
船に乗って住みつき、さつまいもを育て、それを食料としながら隠れ生きた。
隠れキリシタンとして忍び生きた時代・・・。おそらくこの不便な島だからこそ、隠れる
ことができたのだと思う。ということが行ってみて理解できるほどに静か。。。
キリスト教が解禁された明治時代になり、この島に教会が建築され始める。
隠れることなく祈ることができる…信徒らにとっては大きな喜びの象徴が
教会だったのであろう。
この島の教会のいくつかは、このたびの世界遺産の候補にも入っている。
この島の教会は、他の地と違う西洋的ではあるけれど、どこか日本人にとってほっと
するやさしさが伝わる建造となっている。
その教会をつくったのは、この上五島出身の鉄川与助と建築家であることを最近知った。
この方は、教会づくりに生命を賭けたといってもよいぐらいに素晴らしい作品を島内に
多數残している。
信徒たちが大切に守ってきた祈りの歴史と、地元で生まれた建築家の素晴らしき表現。
この両者の融合の力が、後世に生きる人々に勇気と誇りを持たせてくれた。
交通機関もなかった、情報もなかった時代にも、人は思いを繋ぎ、思いを形にして
してきた。
今、世界遺産登録に向け、この島も変わろうとしているが・・そのままで、今のままで
と願ってしまうほど、失くしてはならない大切なスピリットをもつ島。出会えてよかった。