憧れのピアニストよ、永遠に。

子供の頃、「ああ、ピアニストとは、こういう人のことなんだ。」とあこがれた中村紘子さん。
見た目も美しく、あでやかで。華麗なる円舞曲・・・などのタイトルには本当にぴったりな風貌と演奏・・。奏でるピアノのタッチは繊細であるが力強く、鮮明な音。指さばきもピアノの上を踊っているようで感嘆するほかない。
凛としたショパン奏者という印象を持ち、その卓越した演奏ぶりをテレビなどで見ながら、ああなりたいと思っていた少女時代。
ピアニストという職業は、華麗でなければならない、花でなければならない。
そんなことも教えてくれた、だから自分にはちょっと別世界・・と教えられた存在だったかもしれない。

3歳からピアノを始めたという点だけでの共通点。で勝手に親しみをもった。
それなのに、こうも違う人生かと思うが、音楽だけでなく、執筆も素晴らしく、人間には
いろんな才能が授かることもあるのだと教えられ、違う星の下だけれど自分もがんばれば
きっと。。と思った日々もある。

そして60歳を過ぎても、ダイナミックに演奏されている姿を時折見聞きし、
ピアニストは一生できる職業だということも改めて知る。
指さえ動けば、そして暗譜をしていれば、いつでもどこでも弾ける。

中村さんを見て、ショパンのノクターンや即興幻想曲は死ぬまで弾きたいと
思っていた・・。

中村さんが亡くなったとの報に接する。
闘病中もピアノは弾かれていただろうか?指はきっと動いていたことだろう。
頭の中でいつもショパンが流れていただろう。
きっと痛みがあってもピアノでその辛さが和んだ、癒された日もあっただろうと
思いたい。

ステージこそわが世界、人生・・と思える人生、なんと素敵なことだろう。
きっと最期までご自身で弾くショパンやラフマニノフの音色が
彼女を包み続けたことだろう。

ピアニスト。素晴らしい職業だ。少女時代からずっと憧れだった。
まったく違う道へ進んだ今も、尊敬の念は消えない。
心からご冥福をお祈りしたい。
尊敬する人、憧れの人、時代を切り開いた人たちがここんところ、皆さん旅立っていく・・。

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