印刷会社の存在意義。そこで働いた期間があるからこそ、よく理解できる。
20年以上前の話であるが、「印刷の発祥の地ドイツに比べて、日本の印刷業界は地位が低い」と業界の専門家たちが嘆いていたことが今も強く胸に刻み込まれている。
そう、グーテンベルクの活版印刷の発明により、キリスト教は「教会へ行って牧師さんから話を聴く」という教会ありきの存在であったものが、マルチン・ルターにより、聖書は読んで自分で理解し、祈る。という様式に変わった。この宗教革命、印刷技術が普及しなければ実現しなかった。日本の明治以後のキリスト教の布教も同様だ。
印刷あっての思想の伝達、伝播。口述のコミュニケーションから、目に見え、また記録保存できるコミュニケーションへと進化した。このことは人類史史上物凄いことだ。
そして20世紀になり、情報革命はさらにITの世界へと進化し、印刷の世界は現実的には生き残りが厳しい・・そんな世の中になってきた。
今回、久しぶりに印刷の歴史を俯瞰する機会があり、印刷物のすばらしさを改めて感じた。まさに、モノづくりの世界~印刷技術~と、メッセージづくりの世界~コンテンツ・デザイン~の融合によって成立、発展してきたこの世界。そう、グーテンベルグ時代の書物の書体たるや、とても美しい。見た目の美は、この時代からこだわりをもって希求されてきた。
印刷の仕事は誇りである。20年前自らがかかわった本が今も手元にある。40年前に
買ってもらった楽譜が今も宝だ。形になっている以上、記憶をきちんと取り戻すことができ、感動がよみがえるのだ。瞬間ではなく、永久に。残すコミュニケーションについて久しぶりに考えさせれた。自分が一定の期間、かかわってきた仕事の領域に、今一度誇りをもちたいと思う。
もちろん、刷って納品・・ということに終始するだけではいけない。あくまでも本来の目的をいつも忘れずに・・。
「印刷」という仕事に、改めての誇り
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