「まだ」と「もう」の攻防

一緒に仕事をしている20代の女性と移動中に話をする。なんでも近々出張で初の海外体験をするとのこと。「これまで行ったことないんです。これまでも特に行くことはないな~と思っていたのですが。。」と、戸惑いながらも楽しみにしているようでもある。
「私も初めて海外にいったのは25歳のときの出張でしたよ。その1回から人生変わりましたよ~」と答えながら、自分の25歳の頃を懐かしむ。
そう、まさに25歳の5月であった。初めての出張は印刷業界でのNY市場視察。この頃はこういった視察をグループでという時代だ。
NYに慣れることがなく、酒と米がある日本にすぐ帰りたい~、と最後までのたまっていたおじさんたちもいたが、私にとってはこれが文明開化のはじまりとなった。
あれから27年。海外に何度足を運び、さまざまなことを経験、吸収させていただいてきたことか。
そんなことを思いながら、久しぶりにブエノスアイレス行きの往復路、ヒューストンで飛行機を乗り継ぐ。ふと、「27年前が初渡航だったのか~」と空港のトイレの鏡を見ながらしみじみ思い、25歳の自分に戻る。
もう27年か、まだ27年か。気が付けばいつでも、「まだ」と「もう」が攻防する日々の暮らし。「もう」・・といってしまうと、もう幕引きが近いような感じがし、「まだ」といえば、これから未来がある感じがする。
できれば、これからも「まだ」が「もう」に負けぬように、日々若い気持ちで向かっていきたい。25歳のときと、今の自分の違いはこの間に多少の経験を積んだということだけ。まだ生きている、まだ生きる、まだやれる。これらの気持ちは25歳の時以上に強くなっていると思う。

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