平戸を再び訪れる。昨年秋のザビエルプロジェクト第一弾終了後、まさかの雪で冬は断念、そしてやっと来ることができた。今回泊まった宿はバイキング(ビュッフェ)が売りのようで、朝も昼も夜もそのバイキング料理を提供し宿泊客以外に、地元客にも日帰り温泉とともに人気のようだ。食べ放題、とくに夕食ともなればしばらく試していないが、他に選択肢もないのと、久しぶりに楽しんでみようということで利用する。いやー、驚いた。開場時間になると、何十分も前からレストランの入り口に待っていたお客が一斉に会場に足早に入場。東京の地下鉄のラッシュアワーか?いや、違うが。その勢いに驚き、こちらは後れをとる。人々がカニや寿司や・・・と目当ての料理を我先にと皿に盛りつけ、まるでゲームか祭りのように少しはにかみながら争奪しているのを見て、すごいな~と感心し、日本の平和な休日を体感。20分もするとその争奪戦は終わり。それぞれがテーブルで家族団らんのひととき。もう目標を達成したような満足感で、各々が食事を楽しみ。なんといっても、お父さんたちのほっこり顔が印象的だ。九州の焼酎まで選び放題、飲み放題だからだ。運転を気にせず、ゆっくり飲めるのはこの上なく幸せという顔がいっぱいだ。バイキング料理は何かと効率が良い。100席ほどある客席にもホール担当のスタッフはほとんどいない。
そんななか、なんとこのホテル恒例?の歌謡ショーがはじまり、レストラン内のミラーボールがきらきら回りだし、びっくり。そういえば前方に大きなステージがあった。そこの幕が上がり、歓迎!と大きく書いてあるステージが明るくなる。「へ?ここ、そんなショーがあるの?」すると、アルゼンチンタンゴでも踊りそうな、めちゃくちゃ派手な真っ赤なドレスを来た演歌歌手が登場!名前は知らないが、地元では有名なのかも定かではないが、とにかくザ・演歌歌手だ。
私は食べるのも忘れ、彼女のステージをじっと観察し、耳を澄ました。わずか30分ほどのステージ。自分の持ち歌は2曲、あとは有名な演歌を3曲ほど。カラオケだけでひとり歌うショーは、それなりに歌手自体に存在感が必要だ。その歌手、場数を踏んでいるのがわかる。歌もうまいが、それ以上に「しゃべり」がいい!このレストランにも慣れている。バイキング料理を楽しみにきている家族に、お父さんに受ける話し方、そして観客を巻き込む進行・・。私自身はもう自分のステージのように、彼女がどう展開させていくのかを注視。最後はサブちゃんの「まつり」を歌い、ほろ酔い気分のお父さんたちからも歓声。盛り上がる中、幕は下りた。と思ったら、その歌手はすぐ客席におりて、各テーブルのすべての客に声をかけながら、レストラン内を回りはじめた。その行動にも注視した。そうそう、一人一人のお客さんとのこのコミュニケーションが大切で、これがリサーチでもあり、ファンづくりでもあるのだ。彼女の行動を見ながら、自分のことを考え続けた。そして彼女がわがテーブルにもやってきた。「歌もうまいですが、MCがいいですよね」と声をかけると、意外な反応だったようで、「そうなんですよー。しゃべれん歌手は要らん!とここの社長さんに言われるんですわ~。ま、ホテルでのステージは気を使いますけどね。自分のコンサートとは違いますので~」と、余裕の笑顔で気さくに応えてくれた。なかなかいい個性の人だな。彼女は私との会話のあと。「ああ、いい言葉いただきましたわ~」と次のテーブルに移動した。その一言からもその人の姿勢を感じ取った。
そう、歌っているだけではいけない。弾いているだけでもいけない。ステージはしゃべってなんぼ。私も年々、それを実感している。楽しいステージを創ることができる人が真のエンターテイナー。ここ平戸で予期せず、ステージの勉強ができ、なんでもどこでも行ってみるもんだと改めて実感。
それにしても、日本ではまだまだ演歌が健在だ。そして演歌は昭和を思いださせてくれる。またその領域への興味も沸いてきた、