長崎へ出向く。長崎市は熊本や大分のように被害は出ていないようであるが、連休の九州旅行をキャンセルする人は多く、7万人のキャンセルとかで長崎のサービス業のみなさんも深刻だ。確かに九州行きの飛行機、満席でもなく、ゆとりがあり・・。せっかくの連休、いつもと様子が違う。
そんななか、お世話になっているお店をたずねる。上記のとおり、いつもの連休よりは少しゆとりがあるせいかもしれないが、出会った当初は、この人は本当に無口だと思っていたその店の社長さん。前回ぐらいから気軽に話しかけていただき、その変化に驚いていたが、今日も接客はスタッフに任せ、私の前に座って、あれこれお話を聞かせてくれる。製菓専門学校のこと、全国の菓子業界のこと、和菓子と洋菓子を両方つくるお菓子やの歴史、菓子職人の教育などなど・・古き良き時代と今の業界の競争の違い。過去の震災時に被災地の顧客にお菓子を送ってこられた話・・・話題は尽きない。さらにお店の4階に設置してある古いピアノの話をされ、そこでいつかライブでも・という話までしてくださり、その部屋も見学させてくれる・・。最初お会いしたときは人見知りされる方だと思っていたのに、いつの間にか私のことをピアノの先生と記憶され、しかも楽しそうに、うれしそうに話してくださる。
私もつい、一生懸命聞く。職人の話をきけることはとてもうれしい。時間が経つのも忘れ。いや、ここを訪ねるときは時間にゆとりをもってくることにしている。
気が付けば2時間ほどが経つ。すっかり上機嫌の社長は、私にお土産のカステラやご自身が最近改良したとの自信作のお菓子をもたせ、「今度、飲みに行きましょう。」とのお誘い。もっとしゃべりたくなったのかもしれない。普段、人とそんなに話す父を見ない息子が心配して「時間、大丈夫ですか?」と気遣ってくれるのがありがたい。
今回とくに印象に残ったのは、全国のお客さんからのうれしいメール、お便りの話。ありがたい声をいただくたびにコピーして工場に掲示し、職人たちに見せているとのこと。売り場に立たない職人には、お客様の声を聴くことは少ないからとのこと。そのコピーを私にも見せてくれた。
そう、文字で残すと、そのまま職人さんにも共有できるのだ。文字は見えない相手にも直接伝わる。そんなことも含め、あれこれ、ご自身の半生を語ってくれる社長さんと接し、新たな学びをたくさんいただき、握手をして店を出た。店の外にはスペインからの客船が見える。
人の話に、とことんつきあうのも、ときには良いようだ。
一生懸命聞かせていただくことで、一歩づつ信頼感が増し、友人になれる。
人との関係を大切に生きておられる方とのご縁。私も大切にしなければ。