ここ何年かお世話になっている美容室。そこのスタイリストなる女性が腕もいいが、器量もよく、サービス精神にもあふれているため、彼女を気に入ってずっとそこを利用している。東京は美容室の数が大変多く、本当に競争が激しい業界で、よくどこもやっているなと感心してしまうほど。
そのお店は一等地にあるが、勤め帰りのサラリーマンやOLが寄れるように22時まで営業しているし、定休日もなくお客には大変便利であるが、そこで働く人にとっては大変な状況だ。若い人は専門学校を出てからアシスタントとして就職し、スタイリストたちの仕事を見ながら、技術を学び、いずれは自分もスタイリストになるためハードな労働環境であってもそこに就職してくるのだろう。おしゃれやファッションに興味があり、常にその先端を学びながら、手に職を付けたいとは大したもんだと、お客の一人としてではあるが、若いアシスタントたちのこともいつも応援しており、声をかけたり話を聞くことも楽しませていただいていた。
ところがこの1年の間で、そのアシスタントたちが続いてどんどんやめていく。最近会ったスタッフも今月でやめると、笑いながら話してくれて、驚く。担当のスタイリストにいわせれば、この業界はいつもそうだとのこと。若い人がどんどん去っている。スタイリストのご本人は、たぶん20年ぐらいのキャリアだろう。我慢、修行、我慢…の時間があって今はどこに行っても通用する腕になっていると思うが、若い人がそんなに簡単にやめていくのはどうなのか?
彼女は、若い人たちが何を考えているかわからないので、あまり深く聞けない・・という。同じ職場であっても、いわゆる企業の上司と部下という関係とは違うのかもしれない。スタイリストを目指して、自分でのし上がっていく・・という世界なのかもしれず、もしかしたら人を育てるということについては、そんな余裕がないということかもしれない。
ただ、同じ職場で、いろいろ教えてきたはずの若者に、本心を聴けないとか、何を考えているかわからないというのは、とても悲しい。同じ職場で、同じベクトルで・・・お互いに成長していけるように本心のコミュニケーションができるといいのに・・・。
美容業界は見た目は華やかであるが、実際には労働集約型で厳しく、本当に志と根性がある人しか残っていけない業界かもしれない。
私自身もかかわった若者たちが、突然挨拶もなしに去っていくのは寂しい。
相手が何を考えているかわからない・・・そんな関係が増えない世の中がいい。人を理解しあうことが仕事のモチベーションアップにもつながるはずだ。