知り合いの作家は、毎日散歩をすることを習慣化されていた。今から思えば書斎にこもって書き仕事をする身に、適度な運動は大切で、散歩が手軽な運動法であったと思うが、それ以上に企画時間として最適だったのではないかと最近になって気が付いた。
時間に追われる生活ではいかに早く目的地に着くかばかりを優先しがちであるが、今日はあそこまで歩いて往復しようと決めて、歩くことや町を眺めることを目的にするとみるみる脳みそが開いていくのを実感できる。町とは建物や道だけでなく、そこに住み、働く人があって成り立つ。そしてそれは一時も止まっていない。その変化を見つめ続けることで、予想していなかった世界を発見したり、新たなヒントがわいてくる。そして歩き疲れたらカフェで一休み。そしてカフェの中で、一人ひとりのお客を観察し、その人の人生や今日一日を自由きままに想像する。そうこうしていると、乾いていた心、空っぽになっていたかに思っていた頭が満たされて、これだ!という発想につながることもある。
気分が悪い時、テンションが上がらないとき、アイデアに困ったら町に出る。無目的に過ごす時間にこそ、お宝がある。ということで、気が付けば神楽坂から神保町、さらには日比谷までてくてく歩く自分がいる。