人ひとりひとりも意識すれば、立派なブランドであるが、世の中では商品やサービス、組織のブランドについて興味が高いようだ。有名ブランドへのあこがれは、とくにアジア人はお好きなようで・・。でも、そのブランドはなぜ好きなの?と聞かれたら、みんな持っているからという答えが想像できる。ルイ・ヴィトンの歴史を理解して、あの商品を愛用したり、ココ・シャネルの生き方に共感してあの洋服やアクセサリーを身に着けている人・・・こそが、本来の愛好家だとは思うが最近は、有名、お金持ちの象徴・・という程度での価値観であろうか。
サービス業にもブランドがある。長年利用してきたホテルチェーンがある。海外出張で出会ってからの長いおつきあい。その間にはさまざまな出会いがあり、そこのスタッフや幹部たちにもお会いし、そして友達にまで発展した人もあり・・。お金も使ったけれど、それ以上にいろいろ勉強させていただき、ホテル業界のしくみや、顧客の囲い込みについても楽しみながら学ばせてもらった。もちろんそれが全てということではなく、それをきっかけにさまざまなライバルにも興味がわき、自分の世界観に少なからず影響を受けた。今も目を閉じれば、いろんな肌の、いろんな言葉の、いろんな民族のスタッフたちの笑顔やハグを思い出す。そのチェーンが買収されるという話になった。最初はアメリカの同業者。それはそれでとても残念で、早速なじみのスタッフに各ホテルのブランドはどうなるのか?と問い合わせをしたが、当然そんな詳細までまだ決まっているはずもなく、スタッフも知らないはず。そうこうしていると、今度はそのチェーンを中国の保険会社が買収するかも?という報道。冗談じゃない!と思わず思ってしまった。なぜかそうなっては、私が15年以上愛用してきたブランドとは別物になるような気がしたのだ。そして、結果、そのチャイナの資本は買収から撤退との報道。ああ、よかった。心から思ってしまった。もともとこのホテルチェーンで知り合い、今も親交を続ける仲間に今回の話をすると「もし、ここが中国資本になったら、あのチェーンはおしまいですね。アンチチャイナのお客は瞬く間に利用しなくなるでしょうからね。」と意見をくれたが、なぜかそうだと強く思った次第。ある商品やサービスを好きである。ということは、たんに名前であったり、見た目の豪華さや機能性であるだけではない。それを誰が作り、誰が育てて、そして誰が愛してきたか・・その精神性や歴史までも含めて、そのブランドが好きでそこにお金や時間を費やしてきているのだ。ブランドとはハードや価格だけではなくソフト。人。日ごろお世話になっている企業の社長はいつも企業にも人格がある。と言われるが、まさにその通りで、誰が何をしている・・そこが好きかどうかの分かれ目になるのだ。チャイナがどうこうということを言いたかったのではなく、ブランドについて言いたくて書いた。中国人が生み、育ててきた分野や他国や異人と協力して培ってきたものは別である。もちろん買収してから、ブランドを育て直す、作り直すということもあるかもしれないが、もうすでに醸成され、一定の評価を得ているものがガラリと変わるのはむつかしく、また精神性での共有、共感がないといい影響、効果を出すのはむつかしいと思うのだ。
ブランド。ひとりひとり。ひとつひとつ。それは唯一無二であり、もともとはお金儲けのツールではない。結果として認められてきた、他者と差別化するための「刻印」なのだ。