言葉の数は少なかったけれど、かみ合わないコミュニケーションもちょっぴり切ない部分はあったけれど、お会いした後にその存在感がじわじわと自分の中にしみこんできて、あのときこういうことが言いたかったのでは、ああいうことが伝えたかったのではとあれこれその俳優が語った言葉の「単語」がよみがえる。たとえば、酒を飲むということ。一般では、酒を飲むこと自体をもちろん楽しんでいるだろうが、そういう楽しみ方だけではないという話。たとえばサラリーマンの役をするかもしれない役者。だから、居酒屋に行っても周囲のサラリーマンが「どんな酒の飲み方をしているかを観察する」という。だから、飲み屋も勉強、取材の場である。そのことはよく理解できる。何かを表現、創作する仕事をしていれば、どんな場面も仕事である。20年ほど前、会社員時代に教えられた、ONとOFFの区別はないという生き方。いつもリサーチしている、いつも市場を見て、それを企画の肥やしにすること。そんな生活をずっと続けているが、俳優という仕事も同じだと知り、とても共感する。意識をもって見ることで、自分に行かせることが必ずある。
いろんな役を演じる俳優・役者という仕事を自分の仕事にも少し置き換えて浮かんだこと。たとえば酒場に行き、今日はサラリーマン風に飲んでみようとか、今日は未亡人風にとか、さっき上京したばかりのおのぼりさん風に・・・と演じながら飲んでみるのも面白いかもしれない。その人の気持ちになってみることで、新たに書いたり、表現するヒントが出てきそうだ。俳優という仕事に学ぶことは、まだまだありそうだ。今、改めて気になる俳優の演技を、どんどん作品を観てみたい。