長崎に初出張した5年前の春。初めて食べたトルコライス。そのお店は実は、レストランとしてよりも、老舗のカステラ屋として地域に根差しているお店。現在の社長が3代目で、その息子さんたちも一緒に働く家族経営のお店だ。とてもおいしいので、いろんな方にお勧めし、紹介し・・。そして長崎の初コンサートでは店頭にチラシを貼るなど応援いただき、また参加もしていただいた。みなさん、いい人だな~という印象は変わらない。でも、他社と比べて宣伝をしているわけでもなく・・競争が激しいこの長崎でのカステラ業界で大丈夫かいな?いつも気になっているが、なかなか言い出せず・・・。
そして、雪のコンサート後、2か月ぶりに店を訪問すると、前回以上に親しく、迎え入れてくださっているのを感じる。「あの日は大変でしたね~」そう、長崎で珍しい日を共有したのだ。店内の椅子に座ると、コーヒーを淹れてくれる。カステラにとても合うのだ。前にはその日、近くの港に停泊した、クィーンエリザベス号に乗ってきた旅客かもしれない!インド系の西洋人らしきグループがお茶を飲んでおり、やっぱりここは異国だな~と雰囲気に浸っていると、これまで自分から話しかけてくることはなかった三代目社長が「あまいもん、あげましょか」と、にこにこ私に話しかけてきた。あまいもん?カステラじゃなくて?「ケーキです。私が作るんです」と言ってショーケースを案内してくれる。店主のおすすめはモンブラン。それをいただき、そうか~社長がお菓子づくりされるんだと感激しながら心でも味わう。「とってもおいしいですね」と言ったら、そこから社長が急に自身のことを話し始めた。最初は接客の合間ということで立ち話、話がカステラの製法、ご自身の若き日の修行時のこと、会社の変遷・・話題は尽きず、遂には「私も座りますわ」と言って、二人向かい合って、話を続ける。真面目と見えたその風貌の奥に、職人魂が光ってみえる。ふと、新潟で出会う職人社長たちのことを思い出しながら、こちらもうれしくなってくる。外国人客に「サンキュー」を言うのも恥ずかしいらしい、シャイな方であるが、気持ちを許した人にはとことん話される、そしてその話が面白く、それこそ取材しているような気持になる。「いいお話ですから、こういう思いをネットでも紹介したらいいですのに~」「細かいこと載せたら、みんなにわかってしまうので、ダメですわ」と、さすがにネット社会の表裏もよくご存じで。
気が付けば閉店時間まで、社長と話していた。まだ話は尽きなかったが・・。さすが歴史ある経営者、お店についての考え方がきちんとあり・・・。ああ、やっぱりいい会社だな。と改めてこの会社を好きになった。そりゃ、大浦天主堂やグラバー邸など長崎を代表する観光地に存続し続けているのであるから、ただモノではないはずだ。
今回の話のはじまりは「あまいもん、あげましょか」から。お菓子屋の店主からいただいたお菓子は本当に格別で、やっぱりポルトガルの風を感じた。
一生懸命、まじめにやりぬいておられる会社。もっと応援しよう!と心から思った、格別なるスィーツタイムであった。