この冬、運転中にトンネル事故で急死された知り合いの方のご自宅へやっとうかがうことができた。ずっと気になり、早くいかねばと思いながら、やっとやっとの訪問。最寄りの駅にその方の息子さんが迎えに出てくださって、ご自宅に連れていっていただく。そして、ご主人と初めてお会いする。ああ、こういう方が旦那さんだったんだ~。優しそうな温和な・・とにかく、その方の人生後半の起業を影で応援されてきたのがよくわかる・・そんな第一印象であった。仏壇に手を合わせ、静かに祈る。そして仲間がこのために作ってくれた折り紙で作ったチューリップのオブジェをお供えする。それから、座敷で少しお話をする。何を話せばよいか最初は戸惑ったが、共通の話題がすでにあるため、初めてお会いした気がしないような感じになるのが不思議だ。親しみをもってお話しが進む。その方のおうちでの思い出話もお聞きする。私が着ないからといって差し上げたちょっと派手めな洋服を、おうちで着てファッションショーをやって喜んでいたとか、そんな話題に悲しくもあるが、笑みもこぼれ・・。ああ、いい夫婦でおられたのだな~としみじみ。そして「あの日から晩酌してないんですよね。飲むのは私だけなんですが、一緒にしゃべってくれるのがいないと、飲む気にならないもんで~」と語られた、その言葉に胸がつまる。お酒がお好きな方なのだ。そうか夫婦で晩酌をするのが楽しみだったのか・・。渡そうと持参した酒の肴も渡しづらくなってしまい・・。
「またぜひ、寄ってくださいね。」という言葉をいただき、握手をして別れる。駅まで送ってくださる息子さんに車のなかで最後に「お父様の晩酌につきあってやってくださいね」というと「はい。そうします」。そして駅での別れ際にさきほど渡せなかった鮎の昆布巻きを手渡して、彼とも握手をする。
夫婦のコミュニケーション。いろいろな会話があるけれど、晩酌って一番幸せなひとときだと思う。
初対面の私に語ってくださったその言葉が帰りの電車の中でリフレインした。毎日の晩酌を、毎日のモーニングコーヒーを、毎日のあいさつを大切に。
毎日してきたことを、どうか当たり前と思わないで、大切に。と自らに言う。