出張先での夜の過ごし方はさまざまだ。ときに会食のアポが入る、アポを入れる。せっかく来ているので、時間を無駄にせぬようにとつい思ってしまうのだ。そんなことをずっと続けてきた。さすがに深夜までおつきあいというのはかなり前に卒業しているが・・。
時々、先方の都合などでキャンセルになることもあるし、またの機会にと延期することもある。
思いがけぬ、早い時間のホテルチェックイン。日も暮れていない。実はこの瞬間がとても気に入っている。なぜかしら、時間が自由になったことへの幸福感に包まれる。たとえば、こんなに早く宿についたので、ホテル前にあるずっと気になっていた、いつか行くぞーと決めていた喫茶店にコーヒーを飲みに行ってみようかなど、そんな好奇心がわいてくる。そして荷物を部屋に預け、すぐそのお店に出向く。
地方都市の夕方、ひとりでコーヒーをわざわざ飲みに来る人が多いというこの光景になんともいえない豊かさを感じる。
勤め先からの帰りに気に入ったブレンドを飲んでひとりくつろぐ、あるいはここで待ち合わせしておいしいコーヒーを飲んで家に帰る?それぞれのお客さんのことを勝手に想像する。毎日ではないにしろ、習慣的なリピーターも多いことだろう。
夕方時間といえば、仕事を終えたらお酒を飲みに行こうというのが新潟での暮らし方かなと思いがちであるが、この喫茶店には静かなカフェ時間を楽しむ人が静かに集うのだ。ちょっと文化的な香りを感じたりもする。
ワンコインで最高のウィンナコーヒーをいただき、とても幸せな気持ちになり、宿に戻り、今日の仕事の残りや明日の準備にとりかかる。部屋で静かに食事をし、ゆっくり入浴し、そして早く休む。時間がゆったり流れる。朝までの時間がたっぷりある。
あまりにも出張が多いおかげで、ホテルは特別の時間を過ごす空間ではなく、第二の自分の部屋である。出張先でふつうにひとりで蔵らすのはとてもいい。特別でなく普通に暮らす。
ドタキャンはときに自分に豊かさをくれる。とくにあまりに寒く、雪もちらついていたりすると、「今夜は冬眠!」と積極的に自分だけの時間を選択するのもいいものだ。