新しく関係をつくる楽しみ

少し前までは、お店の人とお客という関係だった。そのお店を閉めることになり、もうその店に通うことができない。ここで縁が切れるのはもったいないと、営業最終日にそう思った。
幸いにして、お店の方といつの日からかメールでやりとりをしていたので、お礼やら、ご挨拶やらの連絡は時々とっていた。
そこで、閉店後に切り出した。
「長らくお世話になってきたので、年が変わったら、一度一緒に近くで乾杯しませんか?。お礼もしたいですし。・・」
先方さんは、「何をおっしゃいますやら、長らくお世話になったのはこちらの方なのに・・・」ということで、恐縮されていたが、念願かなって、今年になりそこの店主親子と一緒に神楽坂の居酒屋で再会。
これまで10年近く、「いらっしゃいませ。ありがとうございました。」の関係であったのに、今日はこちらがホストなので、いつもと逆だ。先方さんもどうしたもんかと照れ気味だ。
「お飲み物は何がいいですか?何召し上がります?」
最初戸惑い、また遠慮がちでおられたが、それでもやっぱり最初は生で乾杯。父と同い年のご主人さまは日本酒が好きということで、ちびりちびり・・。いい感じでお酒を楽しまれているようだ。
そして、お店のこと、家族経営のこと、神楽坂のこと・・・戦前のこの町のことから、最近の商店街の奮闘について、隠された特技など・・・まで、いろいろお話をお聞きし、これまで知らなかった一面を知り、しみじみとする。
2時間ぐらいで切り上げるつもりが、気が付けば3時間。
そして、次はそのお父さんの誕生日にまたご一緒しましょう。と約束。
それを喜んで、それまで元気に生きなくちゃね。とのご返事。

ちょっと前まで、お店の人とお客様。閉店を機に、関係が変わる。けれど、関係はつながり続ける。
それが、神楽坂という町のいいところなのかもしれない。
気が付けばいつもどおり、いろいろおせっかいなことを言っていた。

人生は楽しいことも、悲しいことも、寂しいことも、うれしいことも。
生きていれば、見方ひとつでどうにも変えられるとも思った。

うれしい新たな関係、うれしい。大切にしたい。

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