たとえば1日5分の善行。

デスクワークもひとまず一区切り。連休前、出張前の
準備もあって外に出る。
駅に向かっていると、ある人に声をかけられる。
実は、どこにいてもよく道を聞かれる方である。
(外国にいても、そういうことがあるので不思議
であるが)
「あのー、すみません。〇〇商店街はこっちですか?」
と指をさされている方角と、その目的地はかなり違う。
「ああ、そこはそっちではなく、反対のあっち側です」
「そうなんですね。」
ちょっと口頭では説明しづらく、ちょうど自分もどちらか
といえば、その目的地を経由して駅に進んでも行ける
ため、
「ちょっと説明しづらいので、よろしかったらそこまで
一緒に行きましょうか?」
「へ?そんな・・・。申し訳ないです」
「ちょうど、散歩しなくちゃと思っていたんので
いいタイミングでした。」
と言いつつ、二人で一緒に商店街目指して歩き始めた。

途中、私自身のことを不安に思われてもいけないので
ちゃんと道を説明しながら、その人が帰りも困らないよう
帰りはこっちに向かっていけば駅ということを何度も
言いながら、一緒にあるいて数分。
そのうちに少し打ち解け、その方が熊本出身で、今は愛知県内
で、登山のお店に行かれたいのだということはわかり、
熊本の地震のことなど話題にすると、初対面ではない感じ
になった。
そうこうしているうちに、商店街に着いた。

「はい、着きました。目的のお店はこちらへまっすぐ
行かれるとありますよ。帰りはこっち、ずっといくと
駅ですから。どうぞお気をつけて」
「どうも、ご親切にありがとうございました。
助かりました」
お互いにお辞儀をして、そして手を振り、笑顔で別れた。

別に一緒に歩く必要はなかったかもしれないが、
説明しづらかったのと、中途半端な説明でまた道に
迷われたら・・・と思ったから、これで良かった。

不思議なことに、この数分の道案内で、私の疲れも癒された。
なんだか、知らない人にもお役に立てる瞬間があるのだと
思うと、うれしく、自分が幸せな気持ちになった。
そのあと、駅に向かう道のり、身軽なステップになり、
歌いながら歩いた。

毎日、喜怒哀楽。さまざまな感情が押し寄せるが、
1日3分でも5分でいいから、誰かに喜んでもらえる
ことをすると、豊かな心、しあわせな気持ちになれる
かもしれない。

1日1回。小さな善行を重ねる。
すると、「ありがとう」の声をいただけることもある。
その一言で、自分自身が十分幸せになり、元気が湧き、
生きる力も満ちてくる。

さあ、今日はどんな出会い?
昨日の方は無事に商店街で用を済ませ、
駅まで帰れたかな。

その昔、パリの地下鉄でスリにやられたとき、助けて
くださった方のことが頭をよぎる。
世の中には、親切な人がいる。
お元気だろうか?なんだか会いたくなってきた。

善行。
幸せのキーワードだと思う。

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