地方の夜に学ぶ

金曜の夜。たとえば東京や大阪、名古屋といった大都会では、出張、単身族の移動で人が大きく動く。毎週末、週明けは民族の大移動のようだ。そういった光景、何十年も見たり、あるいはその中にいたりして忙しい金曜の夜を過ごしてきた。
そしてときに、地方の駅前でハナキンを過ごす。地方で働くビジネスマンたち、しかも駅を利用して通勤している人々が仕事帰りに飲食店になだれ混む。たとえば岐阜市の駅前にある繊維街は昭和40年代までは盛況であったがその後衰退・・・と思いきや、今は飲食店街として活気を帯びはじめ、そのハナキンは昔なかった人の流れができている。ビジネスマンたちがほどよくゆるく、はじけるハナキン。この光景がとても新鮮で懐かしくもある。そのなかのある1件の居酒屋。常連客、二次会らしきグループ連れ、ひとりで来店する女性客・・それぞれのお客に対し、店のスタッフがいい感じで声をかける。マニュアルも何もない、手作りで方言交じりのおもてなしだ。そしてキッチンが丸見えのカウンターでは店のスタッフ同志のやりとりも丸見えで、瞬時にこの店がいい店かどうかが見て取れる。値段も安く、その店独自の工夫もあり、なんといっても店主がスタッフを気遣って仕事をしている様子がよくわかり、好感を抱く。決して著名な観光地ではなく、お客さんも地元の人がほとんどであるだろうが、なんともいえない心地よい時間が味わえるのである。そのうち「一億総おもてなし」とか意味不明な言葉がどこかから出てくるかもしれないが、そういった十把一絡げの号令的なもの、マニュアルにはまらない、それぞれの個性が生きる、その店しかない独自な味!を出す店が地方にはたくさんある。
東京ではそういった店を探すのがむつかしくなっている。有名にならなくていい、地道にそこにいる人を楽しませる、人を喜ばせる・・・そんなことを普通にやっているお店が大好きだ。地方のハナキン、みんな幸せそう。1週間お疲れ様でした。お店のスタッフがそんな気持ちでお客様を迎えているような素敵な岐阜の居酒屋風景・・・。地方の駅前の夜、もっと注目したい。

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