いろんなライブを経験してきたが、おそらく今回の東京でのライブは生涯忘れることができない経験のひとつになるだろう。
今回、まったく面識のない中国の方のライブ申し込みがあり、不思議に思っていた。
そして当日、楽屋で着替えているとその中国からのお客様があいさつをしたいとのこと。テーブルへ出かけていくと、
なんとまあ、昨年春亡くなった台湾人ANNEのご主人CHENさんとその友人たち。「HEY,IMAO SAN」と笑顔で握手。
へ?上海から(現在は上海在住〕ここで来たのですか?そう、このライブが今日あると、そしてあの曲を歌うだろうから、内緒で行こう・・という作戦になったようで、さすが中華系の友人ネットワークはすごい。
彼は本当にこのライブのためだけに、通訳係の友人を連れて来日してくれた。なんともサプライズな再会。本番前の緊張は一気にさらに高まった。彼は一生懸命、私の演奏を聴き、またトークのときは、友人が一生懸命に同時通訳をしてくれた。
そしてライブ後半、彼のワイフ、私の親友ANNEに向けて創った曲「ANNEソロジー(アンソロジー)」を歌う。
彼はこの1曲のためだけに来たのだ。彼の手元には、私が前回渡したこの曲の歌詞にアルファベットで読み方を書いた大きなシート。彼はそれを見ながら聴き、一緒に歌うのだ。
そう曲がはじまるとき、CHENさんの友は「彼女がここにきたよ」と言った。ANNEが降りてきたという意味だろう。泣いたらいかん。普通に歌う。そう心に決めて力強く、優しい気持ちを込めて歌い上げた。よく上海からわざわざここまで来てくれたね。ありがとう、ありがとう。そんな気持ちをもちながら、とにかく無事に歌い上げようとつとめた。会場からは泣き声が漏れた。
そして曲が終わってCHENさんと抱き合った。ありがとう、ありがとう。あなたも私の親友だからね。
「ANNEソロジー」は、サードアルバムでも大変人気の高い一曲だ。おそらく実在のモデルがいるというリアルさがあるのだろう。
この曲は海を渡る。彼はきっといつもいつも聴く。そして覚えることだろう。今度会うときは、私に歌って聞かせてくれることだろう。
ほんとうに、サプライズなことだこと。台湾の仲間たちはときに、本当に人を驚かせる。大好きだ。歌うほどにANNEを思い出す。彼女は私の才能をいつも認めてくれていた。だからきっと彼女がその歌を聴きたくて、旦那を新宿に向かわせたのだ・・と思う。
」
天国の友が呼んだ客人は、海を越えて
カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク