きっとあの人が・・・。

自転車を乗って日本中を旅して、各地の人とふれあう
番組でお馴染みの火野正平さんの訃報を知った。
若き日の活躍にも親しんできた世代としては、
おじさんになってもがんばっておられるのだ、と
個性豊かなパフォーマンスを見て、懐かしく思い、
今回は新潟か、今回は・・と、番組をしっかり見て
はいないが、馴染みの土地に行かれたのかと思うと
なんとなく親しみをもって眺めていた。

昨年か今年の初めの出来事。
京阪特急に乗って、京都から大阪に移動していた。
途中から、大きい荷物をもったおじさんが、乗り込んで
きた。
あの大きさは自転車だ。
自転車を持ち込み、電車に乗り込む初老の男性。
その雰囲気から、もしかして?と思った。
でも、直接会ったこともないし、アップでの顔は知らない
から、人違いかもしれない。
でも、自転車とあの雰囲気。
そっくりさんは、そんなにいないだろう。

付き人もいないから、違うかなあ。
誰も気づいていないし、声をかける人もいないし。
とにかく真ん前におられるので、視界にしっかり
入る。
かといって、あまりきょろきょろすることもできないが、
絶対に、ご本人だと思いながら、そしてご本人も
なんとなく気づかれているかな?という表情を
ちらつかせながら、しばらく時が経ち、
途中の駅で、その人は電車を降りて行った。
後ろ姿から、やはりそうだ。と確信した。

これまで、飛行機のなかで何人かの人に
声をかけたことはあったが、
(怖いもの知らずの若き日の思い出・・・)
今回は、若い時に知っていた姿とのギャップも
あり、また電車の中ということでの遠慮もあり
確認することもできなかったが、
私の中では、ご本人であったと今も思っている。

70代半ばでの旅立ちは、まだ早いといえる。
最後まで自転車で日本をめぐる仕事をされて
お幸せであったと思う。
出会いと発見を得られる旅が仕事なんて、
大変な体力を費やしての登板であったと思うが
充実の人生であったと想像する。

今から思えば、一言、二言声をかけたら良かった
かな。とも思うが、
カメラに写っていない素の状態の芸人さんは
ひそやかに佇んでおられる。
人目につかないように移動するのも、大変だ。

京阪特急に乗ると、これから毎回思い出すだろう。

心からの哀悼と、永遠の旅立ちを祈る。

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