一粒一粒、味わう能登の米。

先日、お母さまの実家が能登である知人から、ジプロックに
入った、お米をいただいた。お店で売っているのとは違い、
まさにとれたて、無印の農家直送、非売品だ。

「これ、今年母の実家でとれたお米です。地震でちょっと土が
変わってしまったかもしれないので、味はどうかわかりませんが、
でも、私が一番好きな地元のお米なんで、ぜひ召し上がって
ください」自分が一番好きなお米・・・。
そうか。この一言に心があたたかくなる。

きっと、お母さまからのお気遣いなのだろう。
ささやかな応援のお返しにと、このお米をお届けいただいた。
その思いに、心があつくなる。

元旦での地震から、10か月以上。さらに先日の雨被害。
復旧の目途が立たない、そんな状況のまま、寒い冬を迎える
人たちも多くおられると思う。
そんななか、わざわざいただいたこの米袋。
周囲が大変ななか、それでも自分たちは生きていく、食べて
いく。生きる力の結晶が、このお米だと思う。

苦労して作られた能登のお米。そういえば、生まれてこの方
石川のお米は食べたことがなかった。
彼女がそんなに好きという地元のお米。さぞかし美味しい
のだろう。
貴重なお米、と思いながら、ありがたく開封させていただき
一合を炊いてみる。

お米は品種によって水加減が異なるので、いつも食している
お米と同じでいいかどうかわからないが、まあ、感覚で。

ちょっと水が多かったかなと思いつつも、炊飯器から
甘い湯気が立ってきた。いい香り・・・。
優しい気持になり、炊き上げてから、少し蒸らして
ほんの一口をほうばってみる。
あ、甘い味。優しい味。なぜかお米をいただいた彼女の
顔が重なる。このお米が一番好きといったときの笑顔が・・。

このお米を収穫するまでに、地震後の皆さんのご苦労は
・・と想像すると、一口でお腹がいっぱいになった。
無事に収穫出来て良かったと、思っておられるだろうが
いろんな思い出が入り混じって、いろんな味がするのかも
しれない・・・。と想像する。

貴重なお米をいただきながら、今なお、大変な環境にお
られる現地の方のことを思う。

防災の専門家の方と先日交わした会話より。
「もう北陸の人には、元旦はおめでたい日ではないのです。
毎年、追悼の記念日になってしまったのです。」
ほんとうにそうだ。
浮かれていてはいけない。
最近の街中の賑わいを見ながら、そんな思いも。

しばらくこの能登のお米をいただきながら、
お米を研ぐたびに、炊くたびに、握るたびに、
北陸へのエールを送り続けたいと思う。
そして、自分ができる応援を続ける。

能登のお米、ご馳走さまでした。
どうぞ、寒さにも負けず、お元気に無事に年越しを
していただきますように。


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