音は正直。

先日、久しぶりの新潟でのディナーショー。
久しぶりに共演いただくことになったゲストの尺八演奏家
の鯨岡徹さん。
スケジュールを急に入れさせていただいたので、
また対面での練習をする機会もなかったため、
当日、本番までノーリハーサルで行かねばならない状況であった。

覚悟して、6年前までの共演の様子を思い出して、あとは
以前の録音を聴いて、オンラインミーティングで確認した
ことを胸に、本番力でのりきる!と覚悟していたが、

なんと開場直前に駆けつけてくださり、20分ほどの
音合わせができた。
6年ぶりの尺八との共演。

思い起こせば、この数年、ずっとソロで活動していた私。
コロナもあり、自主公演もできず・・・。
でも、細々とできることを続けていた。
そして、今回のディナーショーでの共演。

会場全体に尺八のまっすぐな音色が響き、私のピアノ音が
それに重なる。
いい具合に、瞬時に調和が生まれる。
久しぶりになのに、息が合っている。と思った。
少し音を合わせただけで、安心する。

おかげで、本番もうまくいった。
多少の間違いがあっても、そこは、もう失敗と思わない。
観客の皆さんに、いい!と思ってもらえる世界が表現できて
いればいい。

6年ぶりの共演。
お互いに、それぞれの環境で生き延びてきた。
諦めずにやり続けてきた。
そこから生まれた音。

彼の純粋な、透明感のある音は前から好きであったが
初めて合わせた十数年前よりも、今の方がより、豊かな音に
なっている。
人のいきざま、成長は音に現れるのだろうか。
ニューヨークのトリニティ教会でのコンサートに出演したく
オーディションに誘ったことも懐かしい。
無謀な挑戦もつきあってくれた良き仲間。

「マーサ、ピアノ上手になった」
と、そういわれた。
確かにこの数年で、ピアノへの向き合い方が変わった。
40代、50代前半よりも、ピアノに近くなった。
「そう、若い時に戻ろうと思って。前よりは弾いているかな」

音に向き合う時間がある、そんな人生は改めて幸せだ。
ピアノがあると、歌を歌うと、心が洗濯される気持ちがする。
とても気持ちいい。
そして、お客さんも気持ちいいなら、なおさらうれしい。

それにしても、いい尺八の音であった。
その道に生きる、和楽器の魅力を次世代にもしっかり
伝えようとしている彼の取り組みをあらためて、応援
していきたいと思う。

音は正直で、素直。
その演奏者の内面を表す。


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